尾上右近 自主公演「研の會」惜しまれながら最終「11年前のけじめ」大スターだった曾祖父、祖父から受け継ぐ“血"
歌舞伎俳優の尾上右近(34)が、自主公演「第十回『研の會』FINAL」(9月5~6日、大阪・国立文楽劇場、10月2~3日東京・明治座)を前に、よろず~ニュースの取材に応じた。
右近の曾祖父は六代目尾上菊五郎。3歳の頃、祖母の家で小津安二郎監督が撮った曾祖父の「春興鏡獅子」の映像を見て、歌舞伎俳優を目指すようになった。父は浄瑠璃の清元節宗家で高輪派の家元・七代目清元延寿太夫。また母方の祖父は銀幕の大スター鶴田浩二とさまざまな一流の血を受け継ぐ。現在放送中のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟」では室町幕府最後の将軍となった足利義昭を演じた。
だが歌舞伎の直系ではないだけに、人一番の努力を重ねてきた。そんななか23歳で始めた自主公演。「10回まで続ける」宣言していた通り、コロナ禍で1年伸びたもののの、11年で10回目を迎え、今回でファイナルとなる。「最初は10回続けることが目標だった。1~3回のころは10回という数字があまりにも遠かった」と、目標をかかげたものの無謀な挑戦に思えたこともあった。それでも「4、5回で勢いが付いた」と実感。よしていよいよ後半に突入したときに、突然襲ったコロナ禍。「毎年やっていたものが、一旦止まった。1年おいて6回目。同じことの繰り返しじゃ自己満足になる。だから6回目をやるときは、自分の中で勇気がいった、足取りが重くなると言うか、やる意味を改めて考えた」と振り返った。
だがそうして6回目を乗り越え、7回目からは会場が東京・浅草公会堂になり、改めてやる気に火が付いた。「それまでも550席キャパから倍近くの1000席を超えてきた。埋めないと意味がない。さらに大阪でも国立文楽劇場でやることになった。自分の血を考えても、これの劇場はなかった」と笑う。
曾祖父の「鏡獅子」に憧れ、第1回目の公演でも演目に選び、そして最後でも舞う。「江戸時代の役者が、もしいまの技術があればやってただろうなということをやります」とスペシャルな演出を考えている。
いまもときどき見直すという、曾祖父の映像。「最初に見たときはただただ感動しかなかった」というが、見るたびに新しい気付きがあるという。「いまは究極のリラックスを感じる。確かな技術があるのに、それを感じさせず、華やかで、自然体」と尊敬を隠さない。
そんな祖父への尊敬から、祖母の家にあった「文化勲章以外の」曾祖父にまつわるいろいろな品をもらい受けた。そのなかのひとつに、小さな置き時計がある。「手巻きなので、いまも動いている。楽屋の鏡台の上に置いています。でもすごくないですか?時空を超えて曾祖父と自分が同じ時計で時間を刻んでいるって」とうれしそうな表情を見せる。
この11年の間に、自身の立場も大きく変わった。2017年に七代目清元栄寿太夫を襲名し、昨年は歌舞伎座で「春興鏡獅子」を上演するほどの歌舞伎俳優になった。「『研の會』を始めた頃は想像もしていなかった」と振り返る。
また栄寿太夫の名を襲名したことで、歌舞伎俳優としての幅が広がったことを実感する。「元々歌舞伎は、役者と音楽とは切っても切れない。これまでも音への意識はあったが、音へのアンテナが俄然広がった。逆に音楽家としては、役者がいま何を思い、どう表現したいのかがわかるので、音に気持ちがより乗るようになった」と相互に影響し合っていると明かした。
また祖父のことは、「母や叔母(女優の鶴田さやか)から聞くことがあります。母は役者ではないので、人間としての祖父の面を、叔母からは役者としての面を。でも会ったことはないのになんとなく、祖父の考えていたことがわかる。祖父だったら、こういう考え方をするだろうなって」と誕生前に他界している祖父と確かな血のつながりを感じるという。「性格もね、似てるみたいなんです。すごく暗いもの同士で」と笑う。
今回でファイナル。惜しむ声も多く、右近も「すごく有り難いですね」と口元をほころばせる。「だけどこれで11回、12回と続けると、始めたときに『10回』と決めた11年前の自分にけじめがつかない。『研の會』はこれが最後。それにふさわしい舞台にしたい」と右近。最後は「藝阿呆(げいあほう)」、初役となる「鷺娘」、そして「春興鏡獅子」で最後を飾る。
(よろず~ニュース編集部)
