「A級戦犯とは」高市氏の靖国参拝の是非、公明党の姿勢で注目度上昇 野村修也弁護士が解説
中央大学法科大学院教授で、フジテレビ系「Live News イット!」やTBS系「情報7daysニュースキャスター」などではコメンテーターも務める野村修也弁護士が5日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、あらためて「A級戦犯」の意味を解説した。高市早苗氏が自民党の新総裁に決まり、次の首相に就任する流れとなっている。高市氏が首相として靖国参拝するかどうかにも注目が集まっている。
野村氏は「公明党が高市新総裁に、靖国参拝をするなら連立は組まないと言ったらしいので、念のため、A級戦犯の意味を確認しておく。」と前置きして「A級戦犯」について解説した。野村氏の解説全文は以下の通り。
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中国や韓国が総理大臣の靖国参拝を問題視するようになったのは、A級戦犯を合祀して以降のこと。日本人の中にも、A級戦犯の方がB級やC級よりも重い罪だと勘違いしている者がいるが、正しくは、国際軍事裁判所憲章第6条(一九四五年八月八日制定)の(a)(b)(c)の各号に定められた3つの犯罪類型に対応しているだけで、それらの間に罪の軽重はない。
(a)は「平和に対する罪」で、侵略戦争や国際条約等に違反する戦争の計画、準備、開始、遂行、共同謀議への参加を罰するもの。
(b)は「戦争犯罪」で、戦争法規または慣例に違反する行為を罰するもの。具体的には、占領地内の一般住民の殺害、虐待や、捕虜等の殺害、虐待、公私財産の略奪、都市町村の恣意的な破壊などを罰するもの。
(c)は「人道に対する罪」で、一般住民の殲滅、奴隷化、強制移送その他の非人道的行為や、政治的、人種的、宗教的理由に基づく迫害行為などを罰するもの。
A級戦犯の合祀とは、東京裁判で絞首刑になった土肥原賢二氏、広田弘毅氏、板垣征四郎氏、木村兵太郎氏、松井石根氏、武藤章氏、東條英機氏と、判決後に病死した平沼騏一郎氏、小磯国昭氏、白鳥敏夫氏、東郷茂徳氏、梅津美治郎氏の合計12名を、1978年10月17日に松平永芳宮司が合祀したことを指す。この時、公判中に病死した松岡洋右氏と永野修身氏も合祀されたが、正確には、彼らは判決でA級戦犯と認定されておらず、「内地未決死没者」として合祀された。
この(a)「平和に対する罪」は、国際軍事裁判所憲章が制定された1945年8月8日までは存在しなかったので、東京裁判は行為の時点では犯罪ではなかったものを後から作った法律(事後法)で裁いたものだ。日本が二度と戦争を始めないようにするためには必要な裁きだったとみる意見もあるが、連合国側の勝者の裁きにすぎないとの見方もあり、この罪で裁かれた人々に対する評価は分かれる。
いずれにせよ、閣僚の靖国神社参拝の是非を論ずる際には、A級戦犯の意味を正しく理解して議論する必要がある。
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(よろず~ニュース編集部)
