キダ・タロー CM曲どのようにして誕生したのか「プロポーズ大作戦」「かに道楽」編

 “浪花のモーツァルト”として親しまれる作曲家のキダ・タロー氏(86)は、発表から何十年をへても人々の心に残る数々の名曲を残している。「プロポーズ大作戦のテーマ」、「アホの坂田」、「かに道楽」。それぞれの曲が誕生したマル秘エピソードをこってり聞いた。(上)(下)で。以下は(上)。

 キダ氏の楽曲から人気ナンバー1をファン投票で選ぶ「わが心のキダメロディー総選挙」を昨年12月にNHKが実施した。1位は「プロポーズ大作戦」。ABCテレビで1973年から85年まで放送された公開恋愛バラエティー番組のテーマ曲が一番人気だった。

 「私はずっとジャズをやっていましたので、朝日放送から注文を受けた時にジャズっぽくしようと思いました。番組タイトルがあり、横山やすし・西川きよしというメイン司会者がいて、内容はコミカルで。だいたい雰囲気をつかんでいきます」。

 3枚組CD「キダ・タローのほんまにすべて」の楽曲解説ではトロンボーンの最低音を生かすために曲のキー(調)をEフラット(変ホ長調)に決めたとある。

 「トロンボーンはオクターブ下のシが半音下がった音が『ブゥー』と鳴るんです。いわゆる超低音。ものすごい好きな音です。最初のテーマがあって次の展開部、タララーララララララーラララララーラーラーララー、『ブゥー』と鳴らしたかった。これに合わせてキーを設定しました」

 浪花のモーツァルトが口ずさんでくれた。

 「あの曲は典型的なアメリカのポピュラーソングの形式です。歌いやすくて聞きやすい」

 「キダメロディー総選挙」で2位となったのが「かに道楽」。「とーれとーれ、ピーチピチかに料理」は関西人の心にしみこんでいる。作詞は伊野上のぼるさん。

 「あの方は詩人としてAクラスです。Aクラスの方の詞をいただいた時は『ええなー』と思います。B、Cクラス、はてはDクラスになると『困った。どないしょ』と頭を抱えます。品格高く、叙情高く、韻を踏んで歌い上げるというのは詩人の第一の心得です。でも、ごく一部の方を除いてだれもできない。荒木とよひささんや、もず昌平さんくらいの作詞家になると詞を見ただけでその世界に入っていけます」

 「かに道楽」の詞をぱっと見て自然とメロディーが生まれたのだろうか。

 「詞を見たら『とれとれぴちぴち』がメインやと一発で分かる。問題はここ。ここをいかにクリアするか。どうしようか、どうしようかと考えるんです。そうしているうちに自分の中でなじんでくる。『とーれとーれピーチピチ』がええかなと。ここまできたら万歳。あとは時間仕事です。これにあわせて前後を考える。決定的に方向が分かるんです」

 何日くらいでできたのだろう。

 「覚えてないですね。メインの詞のメロディーは何日かかるか分からないです。1分で終わるかも分からないし、4日も5日もかかるかも分からないです。これが恐怖。曲を作るのは怖いんです。注文をもらったものの作れるやろかという恐怖心があるんです」※(下)に続く。

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