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片岡松之助

 大阪松竹座で現在上演中の「中村芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名披露 七月大歌舞伎 関西・歌舞伎を愛する会 第二十五回」(~27日)に出演している片岡松之助。2013年に幹部に昇進。『仮名手本忠臣蔵』の鷺坂伴内などの軽妙な端敵に定評がある一方、『沼津』の安兵衛など実直な役も好演している。七月大歌舞伎では昼の部で『小さん金五郎』『与話情浮名横櫛』、夜の部は『鳥辺山心中』に出演している。

  ◇  ◇

 今月はいろいろ出させていただいているので、忙しいですね。関西と東京ではお客さまの反応が違います。今月の『与話情浮名横櫛』の藤八などは、思っていたところで受けていただいています。でも以前、京都南座で『鳥辺山心中』のお染の父与兵衛を勤めたとき、「おお、娘か」のセリフでお客様が笑われた。お染をやっていらした若旦那(孝太郎)に「セリフ回しがおかしいですか?」と伺うと「普通だよ」と。もしかしたらイヤホンガイドの説明かと思って確かめたけど、何も言っていない。あれは不思議でしたね。

 幹部に昇進した重圧はありますね。大きいお役をいただいても、役慣れしていないので、「まだまだ」と反省ばかりです。以前はそれほど気にしなかった役でも、いまはこれでいいのだろうかと悩むことがあります。一生懸命模索している最中です。

 どことなく愛嬌があると言っていただくのはうれしいですね。悪い役をやっても、いやらしくないようには気を付けています。それほど器用ではないと思っているので、何度も重ねるうちに、役が自分のものになっていく。こうしようと思ったことが、実際の舞台では六分ほどしかできない。頭の中で「ああしよう、こうしよう」と思ったこともできずに、舞台が終わってから反省する。特に初役は楽日まで少しずつ変わっていきますね。

 うちの旦那(仁左衛門)のような方でも、役については人の意見を聞かれる。私もそれを見習い、独りよがりにならないように気を付けています。もちろん自分では「これがいい」と思ってお役を作っていますが、第三者の目から見ると違ったようにも見えますから。1カ月勤めていて「なるほど」と気づき、次にまた同じお役をいただいたときに「こんな風にしてみて…」と思って、満足いくようになるには5回目、6回目に役をいただいたときということもあります。今月の舞台も、毎回悩みながら演じさせていただいております。

 もう一度演じてみたいのは『妹背山婦女庭訓 吉野川』の三枚目の腰元ですね。20年以上前(1993年6月、京都南座)に、代役で演じたお役ですが、楽しかったですね。ご一緒させていただいた山城屋の旦那(坂田藤十郎)や成田屋の旦那(十二世・市川團十郎)の息遣いやセリフ回しなどをそばで感じることができましたし、初めてのことばかりで楽しかったですね。

 好きなのはやはり上方の芝居ですね。やっていて楽しいです。大阪の人間なので、言葉にも苦労しない。江戸歌舞伎の場合は、いまでも言葉に気を付けています。これからもいろんな役に挑戦したいですし、もっともっと役を広げていきたいと思っています。

 この世界に入ったのは、父親が大阪の三階(※)の歌舞伎役者だったからです。小さなころは千日前にあった大阪歌舞伎座に遊びに行き、父と一緒にお風呂に入ったりしていました。うちの2階に日舞のお師匠さんが住んでいたので、教えてもらったりもしていました。でも子役で出演したりなどはなく、16歳のときに父の勧めで先代(十三世・片岡仁左衛門)に弟子入りし、旦那(当代・仁左衛門)付きとなり、以来50年になります。朝日座で初舞台を踏み、20歳のときに旦那と一緒に私も東京に移りました。

 旦那はとにかくお客さま大事、芝居大事の人。繊細で気配りがすごい。例えば化粧している最中に若手が挨拶に来ても、必ず振り返り、目を見て挨拶を返される。あんな役者はなかなかいらっしゃらないです。大病も何度かされましたが、しなやかな強さがある。旦那をそばで見ていますので、自分も幹部にはなりましたが、決して偉ぶらないようにと思っています。

 一門では私が一番の古株になりますが、弟子たちが多くなっても、結束を乱さないようには気を付けてきました。旦那の後見も若い人に譲りましたが、ずっと旦那のそばにいたので、正直、寂しいですよ。でも若手を育てなきゃいけませんからね。でも記念の演目のときなどには、またぜひ後見をやらせてもらえればと思っています。

 ※名題以下の役者のこと。江戸時代、名題下の役者は楽屋3階を使用していたことからこの名称が生まれた。

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 四代目 片岡松之助(かたおか・まつのすけ)1948年2月1日生まれ。父は故・尾上良五郎。十三世片岡仁左衛門に入門、65年5月大阪・朝日座で片岡松三郎を名のり初舞台。78年6月新橋演舞場『ひらかな盛衰記』の日吉丸又六で四代目片岡松之助を襲名し名題昇進。2013年11月歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』三段目・七段目の鷺坂伴内で幹部昇進。屋号は緑屋。

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