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【篠山輝信】「ピローマン」満を持して紹介!不思議で悲しい戯曲

 「ボクのイチオシ」

 以前このコラムで映画「スリー・ビルボード」を紹介したときに、脚本兼監督のマーティン・マクドナーのことを僕は、現存する劇作家のなかで一番好き、なんてなかなか大きなことを言いました。せっかく「スリー・ビルボード」で盛り上がったんだから、ここで満を持して彼の演劇作品のなかで僕が一番好きな「ピローマン」を紹介したいと思います。

 僕は2004年にかつて渋谷にあったPARCO劇場での上演を観ましたが、その物語のあまりの面白さに上演時間が三時間半ほどあったにもかかわらず、一瞬も退屈することなくあっという間に時間が過ぎていった衝撃を今でも鮮明に覚えています。そのあとすぐに戯曲も買って、それから折に触れて読み返しています。

 ピローマンの登場人物は基本的には4人しかいません。作家のカトゥリアンとその兄の知的障害のあるミカエル。この2人がある全体主義国家の警察に逮捕されて取り調べ室で刑事2人から尋問を受けている。最初はなぜ自分が捕まったのか見当もつかないカトゥリアンですが、話をきいていくと、最近起きている子どもの殺害事件の手口がカトゥリアンの書いたたくさんの短編の内容と酷似しているという…。

 この作品で非常に大きな役割を担っているのは、作家カトゥリアンによって書かれたいくつもの奇妙な物語です。それらのお話の内容は尋問でのやり取りや、劇中劇として上演されたりして明らかになります。それらはどれもどこか童話的、寓話的ですが、その中にはしばしば子どもに対する残虐極まりない暴力が含まれています。

 タイトルのピローマンというのもカトゥリアンによって書かれたお話のひとつです。ピローマンは枕でできたフワフワの怪物で、いずれ大人になって残酷な自殺をするという運命の下に生まれた子どものところに現れて、その子がこれから悲惨な人生を送ることがないように、子どものうちに自殺することを勧めるというのがピローマンの仕事です。ちょっと不思議でとても悲しいお話です。

 戯曲はあまり読んだことがないという方もおられると思いますが、登場人物も少なくてとても読みやすいので、戯曲にあまり慣れてない方にもお勧めです。とにかくとんでもなく面白いです。わざわざインターネットで購入しても絶対に損はしないはずです。保証します。

 ◆篠山輝信(しのやま あきのぶ)1983年12月10日、東京都出身。俳優。映画、舞台などに出演しつつ、NHK「あさイチ」のリポーターとして活躍。

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