俳優の東出昌大（２７）が２６日、主演映画「ＧＯＮＩＮ　サーガ」（石井隆監督）の初日舞台あいさつを行い、サプライズで届けられた俳優・根津甚八（６７）の手紙に声を詰まらせた。

　手紙を代読した東出は「根津甚八です」の書き出しに顔をこわばらせ、根津の「たすきを受け取ったと言ってくれた東出くん。その言葉で、演じたいのに演じることのできない無念を断ち切ることができました」という下りに手を震わせた。

　東出は手紙を読んだ感想を聞かれても、１分近く声が出せず、やっと撮影時の根津を思い出したように「映画は心血を注いで撮ってるんです。人生を賭して撮っているんです。僕は根津さんが大好きです。映画の中の根津さんは考えられないぐらい魅力的です」と一気に根津への思いを吐き出した。

　根津は東出の事務所の先輩でもある。

　共演の桐谷健太（３５）も「根津さんの役者魂に触れさせていただきました」と話し、竹中直人（５９）は「根津さんにはかなわないですよ。尊敬すべき俳優ですよ」と言葉をつないだ。

　根津は１９９５年に公開された「ＧＯＮＩＮ」で裏社会に通じている元刑事・氷頭要役で出演した。石井隆監督（６９）は続編製作の構想を持っていたが、根津は２００１年に右目の下まぶたが垂れ下がり、物が二重に見える「右眼下直筋肥大」を発症。持病の腰痛も悪化し、２０１０年に俳優業からの引退を宣言してしまった。

　石井監督は「－サーガ」の製作にあたり「氷頭は生きている」とことを前提とし、車いす生活を送っている根津に出演を依頼した。根津も１度だけの約束で１１年ぶりにスクリーンに復帰した。

　同作は２４日に開幕したカナダの「第３４回バンクーバー国際映画際」への正式招待作品となっており、東出も現地へ赴くことになっている。