「キングダム」佐藤信介監督が語る「映像不可能」を可能にした魔法の裏側 見せ方で決まる「圧倒的な存在感」

 大ヒットシリーズの劇場版5作目となる映画「キングダム 魂の決戦」が17日に公開される。春秋戦国時代の大合戦を迫力ある映像で提示し、アクション作品の可能性を拡張し続けている同シリーズは、どのように作られているのか-。「映像化不可能」を可能にしてきた魔法の裏側を佐藤信介監督に聞いた。

 大将軍を目指す主人公・信の成長を描く「キングダム」は、佐藤“信”介監督らチームの成長物語でもある。

 シリーズを通して、スタッフは一貫。2019年公開の1作目から7年以上の積み重ねがあり、佐藤監督は「改善を繰り返しているシリーズなんです。毎回、取り組む課題と結果があり、次の作品では前の結果を鑑みて新しいステップを考える。それを繰り返しています。だからいつも同じチーム。ワンチームなんです」と説明する。

 「1」では主人公の冒険譚にフォーカス。「2」で一気に大合戦へとかじを切り、より戦場の広がる「3」「4」につなげるなど、テーマを設け、実験・検証し、結果を受けてブラッシュアップするシステムがシリーズを通じて駆動している。

 最新作「-魂の決戦」では、物語の中心となる国・秦に対して敵国が手を組み、合従軍となって進軍。絶望的な状況が突きつけられる中、秦は巨大な国門・函谷関(かんこくかん)で迎え撃つ。

 新作で取り組んだテーマの一つが「馬」だという。実際、どうやって撮ったのかと目を丸くするような騎乗戦が次々と展開される。

 「『5』では馬も戦いに参加しています。ずっと取り組み続けていて、『2』では馬がどれだけ技術的に動かせるのかの実験、検証を1年かけてやりました。作り物もCGも使うし、いろんなことをやって、結果どう見えるのか。出てきた課題を『3』『4』で進めての今回。成果があったかなと思います」

 巨大建造物である函谷関をどう魅せるかも新たな挑戦だった。高低差のある戦場で秦軍と合従軍が相対し、立体化した複雑な布陣で戦いが進行していく。

 「使えるものはなんでも使った感じです。CGも作り物も実際の風景も。とにかく再現不可能な大軍勢VS大軍勢を作っているわけですから、1カットたりとも『1万人いたんで1万人を撮りました』みたいなことにはなりません」

 撮り方は多岐にわたり、最大規模では100頭近くの実際の馬たちが投下された。一方、狭い範囲の撮影で限られた頭数や作り物を使うこともあり、同じシーンで、スタジオのグリーンバックと、ロケでの馬のカットをつなぎ合わせていることもあるという。

 「どんな絵にしたいかで撮り方がまるで違うし、どんな絵にしたいかは、どんなシーンにしたいかじゃなくて、シーンの中にある無数のカットを全部分解して、そのカットを撮りたいときにどう撮るか。そのどう撮るかをひたすら考えていく。ここがミソですね」。トータルでは何千カットにも及んだが「撮り切りのカットはほぼないです。なにかしら(処理を)やってます」と細部まで手が加えられている。

 数々の武将や函谷関そのものに圧倒的なオーラを付与するのが腕の見せどころ。「どう見せるかで圧倒的な存在感が決まる。CGと言ってもさまざまですけど、魔法のようなものがポンと加わると何でもすごくなるわけじゃないんです。剣でも本物を撮れば本物に見えるわけではなかったりする。キャラもそうで、『それじゃオーラがなくなっちゃうよ?』ってこともあるわけですよね」。

 映像化不可能を可能にすべく積み上げられたチームの知見と覇道を進むキャラたちを際立たせる演出。キャストの熱演にかけ算された魔法が「キングダム」を「キングダム」たらしめている。

 ◆佐藤 信介(さとう・しんすけ)1970年9月16日生まれ。広島県出身。武蔵野美術大学在学中に「ぴあフィルムフェスティバル」でグランプリを受賞。2001年に映画「LOVE SONG」でメジャーデビュー。主な監督作は映画「GANTZ」「図書館戦争」「アイアムアヒーロー」「いぬやしき」、ドラマ「今際の国のアリス」シリーズなど。

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