【美輪明宏さんを悼む】「人間関係は腹六分で」 気配りと「ケの法則」 自宅取材で示された信条

 歌手で俳優の美輪明宏(みわ・あきひろ、本名・丸山明宏=まるやま・あきひろ)さんが、20日午前9時30分、老衰のため都内の自宅で死去していたことが28日、分かった。所属事務所「オフィスミワ」が公式サイトで発表した。91歳。長崎市出身。葬儀・告別式は近親者で行った。お別れの会や偲ぶ会の予定はないという。デイリースポーツの編集委員が故人を悼んだ。

   ◇  ◇

 2012年の年末から13年初頭にかけて美輪さんの自宅に通った。「NHK紅白歌合戦」に当時77歳の史上最年長で初出場を果たし、再評価ブームが起きた頃だった。

 胡蝶蘭とロココ調の家具に囲まれた1階のリビング。代表曲「ヨイトマケの唄」が生まれた背景、三島由紀夫ら著名人との交遊関係を取材した。

 その中で、舞台で共演していた某有名女優との間柄を聞くと「あの人の話は聞かないで」と目を伏せ、言葉を続けた。「人間関係は腹六分で」。深く関わりすぎると、関係がこじれた時の反動は大きい。八分よりも少ない「六分」で人と接するという信条を示された。

 気配りも感じた。インタビュー中、記者の額から流れる汗に気づくと、「ちょっと待って…」と話を中断。2階に駆け上がって戻ってくると、手にした白いガーゼ素材のハンカチで汗を拭いてくださった。記者が持参した丸山明宏時代の自伝「紫の履歴書」初版本(1968年刊)にサインをいただく際、その場ではなく、離れたデスクに座って背筋を伸ばし、深呼吸してから毛筆で書かれる後ろ姿に恐縮した。

 その後、数年間にわたって公演の楽屋に毎回招待いただき、その律儀さにも感謝した。

 こんなやりとりも思い出す。「不思議なんですけど、私がブームになった作品はみんな『ケ』が付くんですよ。『メケメケ』『ヨイトマケ』『黒蜥蜴』『雪之丞変化(へんげ)』『もののけ(姫)』…。あなたも、どこかに『ケ』が付きませんこと?」。美輪さんから「ケの法則」を伝えられ、記者が自分の名前の最後に「ケ」が付くと返答すると、「これもいいわよ」と私の“あごひげ(毛)”をなでられた。ご冥福をお祈りします。(デイリースポーツ編集委員・北村泰介)

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