サックス奏者・小林香織 15周年盤は「円形ステージ」(インタビュー前編)

取材に答える小林香織=東京・音羽
15周年記念アルバムをリリースした小林香織=東京・音羽
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 サックス奏者の小林香織(39)が15周年イヤー最終月だった今年2月、記念アルバム「NOW and FOREVER」をリリースした。「過去を振り返るだけではなくて未来にも目が向いている。NOW and FOREVERという言葉がしっくり、ぴったりはまっている」というアニバーサリー・アルバムと、「時間の重みを考えるとグッときます」という15年の歩みについて聞くインタビュー、その前編。

  ◇  ◇

 小林は2005年、アルバム「Solar」でメジャーデビューした。当時は「いわゆるフュージョン」のスタイルだったが、30代で「ありそうでなかったサックスミュージックを作りたい。ジャズとフュージョンにカテゴライズされないインストを聴いてもらいたい」とセルフプロデュースを開始。「今は唯一無二といいますか、こういう感じのサックスミュージックはいそうでいないかな」と自負している。

 その言葉通り、本作もヒップホップ色が濃い曲やボーカル曲、海外でも人気のシティポップと彩り豊かで挑戦的なアルバムに仕上がっており、小林は「360度の方向から円形ステージみたいに見ていただけるアルバム」だと表現する。

 ラップやスクラッチが入る12曲目「New School Etude」は「1曲目から最後の曲まででつじつまを合わせる作業に1曲ものすごいラップが入ってくるのも難しいかもと、ラップと歌の中間みたいなものにしましょうというところで落ち着いた」と説明するように、取っつきやすい仕上がり。

 小林は「グッとくるメロディーとか美しいメロディーの中にかっこいいラップを入れていく、アルバム1枚そういうものをいつか制作してみたい」と考えており、未来への予告編でもある楽曲だ。

 「情報とものが十分すぎるぐらいある時代に新規でものを作るのは、本当に表現したいものがまだ出ていないというか。赤と白はあるけどピンクはない、そんなイメージです」

 最終13曲目「I Raise My Hands up」は、セカンドアルバムでさかいゆうをフィーチャーして以来のボーカル曲。英歌手シアン・ケリーが参加している。

 「作っている中でこういうふうな歌がほしいっていうイメージがあって始まったので、歌ものを作ったつもりではないけど、結果としては良いあんばいというか。歌が入っている時は(サックスは)数歩後ろに下がるという立ち位置になります。でも後ろに見えているものは当然、写った時にいい方がいいわけで、そういう参加のしかたができた」

 3曲目「Mermaid」は大学生時代の曲をリメークしたもので「22歳くらいの私とアラフォーになった私の共作という感じ」。15年やって来たからこそのたまもので、「心に残る強いメロディー作り」という「根底にある部分は変わっていないし、そこを大事にしつつ磨いていきたいなと思わされた1曲」だという。

 「サックスはジャズ/フュージョンにカテゴライズされるとアドリブのテクニックのかっこよさを魅力とすることも多いんですけど、かっこよさと相反するメロディーの大切さは、作曲家としての私のこだわりが詰まっている部分ですね」(後編に続く)

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 ◆小林香織(こばやし・かおり)1981年10月20日生まれ、神奈川県出身。東京育ち。サックス&フルート奏者、作編曲家、プロデューサー。中1でフルート、高2でアルトサックスを始める。2000年、洗足学園音楽大学ジャズコース入学。ボブ・ザング氏に師事。05年、アルバム「Solar」でメジャーデビュー。これまで台湾、中国、タイ、韓国、シンガポール、香港などでアルバムを発売。インドネシアのフェスでは現地紙の1面を飾る。16年のアルバム「MELODY」でさかなクンと共演。

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