「サザエさん展」で話題 やけにリアルなサザエさん一家の秘密を造形家に聞いてみた

「サザエさん展」での(左から)マスオ、波平、JIRO氏、サザエ=都内
「サザエさん展」でのJIRO氏(左)と(奥左から)フネ、カツオ、タラオ、ワカメ=都内
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 確かにサザエさんなんだけど、やけにリアル…。

 サザエさん一家を等身大で再現、展示した「サザエさん展 THE REAL」(9月1日まで東京・フジテレビ本社屋25階球体展望室はちたま)が、SNSで「リアルすぎて動きそうなくらい」、「子供が泣き出さないか心配なレベル」などと反響を呼んでいる。造形を担当したクリエーター集団「自由廊」を率いる特殊メイクアーティストのAmazing JIRO氏を訪ねて、リアルなサザエさん一家の秘密を聞いた。

 始まりはフジテレビの番組「プレミアの巣窟」からの「サザエさんを人間にしてください」というオファーだった。これに応えてまず造られたのが、今回も展示されているサザエ、フネ、タラオだ。

 国民的なキャラクターだけに、リアリティーを付与した結果が「全然違ったものになってしまったら、表現としては失敗」になる。2次元のデザインからデジタルによる3次元化へと移行、違和感を調整してから「アナログ」な作業で造形していくが、その過程は困難を極めた。

 2次元のアニメでは「平仮名の『つ』」のような鼻も、3次元では立体化しなければならない。その場合「鼻の穴もないと人間との機能としておかしい」ことになってしまう。2次元では人間と体の「比率が全然違う」という問題もある。

 かといって、リアルすぎると「印象が大きく変わってしまう」ため、本来のキャラとリアルな人間との間でのバランス調整が「難しかった」という。そんな中、「表現として新たな試みは、あくまで2Dのバランスを保持しながら、パーツとしては機能するリアリティーを持たせる」ことだった。

 具体的には、例えば「肌感、色味、ディテールをリアルにするという判断」のもと、「肌のテクスチャーに人間の持つリアリティーをプラスしていく」。アニメでは単色の肌も「リアルな肌感を出すため、最低5色くらいの色を重ねて」おり、シワはもちろん、細かいホクロやシミも入れられている。

 アニメでは小さな瞳も「親しみやすさやかわいらしさが大きく損なわれない」範囲で「かなり大きく」された。髪は人毛と人工毛をシリコンの皮膚に1本1本、丁寧に手植え。カツオやワカメ、タラオの借り上げは、手植えした髪をバリカンで刈ったものだ。

 このように徹底的な造形を行う「自由廊」を率いるJIRO氏は、特異な経歴を歩んできた人物だ。

 東京芸大を卒業後、代々木アニメーション学院で特殊メイクを学び、社会人経験のないまま2001年に自由廊を設立。「色んな素材を使って、何でも想像したものを形にする未来を夢見た」ことが、枠にとらわれない道を選ばせた。

 工房で生活する苦しい日々が4年続いたが「本当に自分がやりたいこと」を追い求める中で、プロレスからマジックまでさまざまなジャンルを手がけることで仕事を軌道に乗せ、新たな技術や表現を生み出してきた。

 その活動範囲は特殊メイクアーティストという言葉には収まらない。プロレスラー、ザ・グレート・ムタのマスクや衣装を造ったかと思えば、東京ゲームショーのために人気ゲーム「グランブルーファンタジー」の25メートルもの巨大船の造形をディレクションするなど、いまや「フェイス&ボディペイント/特殊メイク&造形/映像/広告/イベント/ファッション等々」(自由廊公式サイトから)、幅広い分野でデザインからディレクションまでを行うようになった。

 その一つの結晶であるサザエさん一家の仕上がりに、JIRO氏は「企画自体すごく新しい、今までにない領域で、新しい表現に一石を投じた。怖いって感じる人もいると思う。それはリアルに感じるゆえだと思うので、僕らにとってはうれしいこと。ぱっと見、ぎょっとするかもしれないが、目が慣れた時、一回受け止めてもらった時、それぞれのキャラクターの個性を感じ取ってもらえると思う。新しい見え方をするサザエさんの衝撃を受け止めてもらいたい」と自信を漂わせた。

 サザエさん展は9月4日から23日まで大阪・大丸梅田店で開催され、長野、愛媛、富山、東京、北海道、愛知、京都、広島、宮崎、静岡と巡回する。

 「説明のいらない感動って、サプライズだと思っている。驚きを常に追求している、驚きを与えることに執着している」というJIRO氏と自由廊の仕事を見逃す手はない。

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