神田正輝コラム(終)俳優は「宝くじ」
【ナンダカンダで40年】俳優って不思議な商売です。まさに「宝くじ」ですよ。この年になって、若い人が「芝居やりたい」なんて言うのを聞くと疑問に思いますもん。演技がうまいから長く続くとか、かっこいい人がいつまでもやっていられるかといったら、そうじゃない。時の流れと共に運もある。保証のない仕事ですからね。
僕だって「保証がない」とか言ってるうちに65歳になっちゃった。世の中、普通だったら定年ですからね。だから自分のことを考えたら、僕よりうまい人も、かっこいい人もいっぱいいたし、なんでやってこられたか分からない。だから運が良かったな、宝くじだなって思うんですよ。
ただ目の前にあることに夢中でした。自分は足りないものがいっぱいあるから。それがスタート。デビュー作「大都会 闘いの日々」から最初の1~2年は溺れてましたよ。
「闘いの日々」の第1話を終えた時、山(スキー場)に帰りました。あのまま戻らずに辞めていれば…。次の回から別の人でもよかったわけで。それでも役者を続け、3年たってから「山にも帰れないな。次、何か仕事ないかな」と思いながらやってました。ほっとらかしてくれたから続いたんでしょうね。
そう、この「溺れてる」というのは正しい表現かもしれない。溺れてるうちに、だんだん沈まないことが分かってきて、現場で少しずつ覚えていって。あっぷあっぷして、夢中になってる間に時間が過ぎていきました。
もともと会社員向きの頭ではなかったけど、俳優になる気も全然なかった。スポーツの運動能力や感性とは違うし、手際だけ飲み込んでも芝居はできない。役者は頭の神経のものだから。技術じゃなく「気」ですよね。
そんなことを思いながら、気がついたらナンダカンダで40年。これからも神田正輝としての仕事や活動を続けていきます。ご愛読ありがとうございました。
(おわり)