若元春 新会場初金星!豊昇龍撃破 べらぼうパワーで大仕事 前日から練った作戦奏功「この経験を生かしたい」
「大相撲名古屋場所・2日目」(14日、IGアリーナ)
平幕の若元春が横綱豊昇龍を寄り切り、新会場IGアリーナで初めて、自身2つ目の金星を獲得した。場所前にNHK大河ドラマ「べらぼう」に出演したことで話題となった人気力士が、2年前に豊昇龍、大栄翔と3人で大関とりに挑んだ名古屋場所で、新たな歴史をつくった。豊昇龍は昇進3場所連続6つ目の金星配給で1勝1敗。新横綱大の里は安青錦を問題にせず押し出し2連勝とした。大関琴桜は王鵬を寄り切り初日を出した。
時は来た。豊昇龍が巻き替えを仕掛けた瞬間だった。若元春が「横綱の体が少し浮いた。走るだけだ」と前に出た。一気に土俵下にたたきつけるように寄り切った。観客のマナーがいいのか座布団は舞わなかったが、大歓声の中で胸を張った。
立ち合いで右差しを防ごうと左に開いた。豊昇龍の張り差しとぶつかって体が離れた。再び距離を縮めると、無類の強さを誇る左四つの形になっていた。「スパッと左が差さり、あっと思った。その時間の分、焦らずに攻められた」。過去2勝13敗。前日から練った作戦が奏功した。
土俵を下りる際は、上がり口の段差に足を滑らせ、尻もちのように腰をかけた。中継に映り「恥ずかしい。全国に醜態をさらしてしまった」と苦笑した。昨年初場所以来、自身2個目の金星には「番付を落としているので誇れることではない。この経験を生かしたい」と冷静に話した。
2年前の名古屋場所。若元春は豊昇龍、大栄翔と“トリプル大関とり”に挑んだ。結果は豊昇龍が初優勝で大関に昇進し、今年は横綱として向き合う。「横綱になってすごいなと思う。自分はあのタイミング、上がる実力はないと思っていた」と述懐する。ただ、平幕に落ちても、地道な努力がIGアリーナ初金星につながった。
場所前にはNHK大河ドラマ「べらぼう」に遠藤、錦木と力士役で出演。俳優の峰竜太、横浜流星からエールを送られた。「ドラマの現場は初めてで思ったより和気あいあいとしていた。緊張したがやりやすかった。相撲とは関係ないが、人生の経験になりました」。新たな刺激があった。
2年前と比べて「経験は増えたが、相手も対策してくる」と左四つを封じられる場面が増えた。「体力は衰えている。稽古の番数もできなくなった」と率直に語る。それでも、この日の金星、そして大河出演を経験値にする。「これも勉強。引退するまで勉強ですから」と語る表情に悲愴(ひそう)感はない。まだまだ幕内の土俵を盛り上げ続ける。





