大の里が史上最速V 初土俵から所要7場所 優勝の「実感」に思わず涙 新時代への通過点「上へ上へと頑張りたい」

 幕内優勝し、表彰式で八角理事長(右)から賜杯を受けとる大の里(代表撮影)
 大の里(左)が押し出しで阿炎を破り初優勝を決める
 優勝パレードで満面の笑みを浮かべる大の里。左は白熊(撮影・佐藤厚)
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 「大相撲夏場所・千秋楽」(26日、両国国技館)

 単独トップだった新小結大の里(23)=二所ノ関=が関脇阿炎を押し出し、12勝3敗で初優勝を飾った。幕下10枚目格付け出しの初土俵から所要7場所目の優勝は史上最速となった。三役での2桁勝利で大関とりの起点作りに成功すると同時に、新入幕から3場所連続の三賞となる殊勲賞と技能賞もダブル受賞。規格外の大器が、新時代の到来を告げる快挙を成し遂げた。

 勝っても表情を変えなかった大の里が、土俵上で思わず顔をほころばせてうなずいた。幼い頃から夢見てきた幕内最高優勝。勝ち残りで座ると、今度は見る見る泣き顔になった。「優勝したなって実感がわきました」。あふれて止まらない涙を拭い続けた。

 4敗の阿炎との直接対決。しびれる大一番で、優勝経験者を圧倒した。相手のもろ手突きを左でいなすと、右を差しにいきながら体を密着。そのまま体ごと前に出て、2秒7で勝負を決めた。

 師匠の言葉が心を解きほぐしてくれた。単独トップに立った前日。二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)に「これ(優勝)が目標じゃないぞ」と声をかけられた。初Vは通過点、目指す頂はまだ先と再確認し「本当にその言葉をいただいて気持ちが楽になった」。結果で応えた後の支度部屋でようやく、優勝への意識は「本当はずっとしてました」と素直に打ち明けた。

 初土俵からわずか1年。幕下10枚目格付け出しデビューから所要7場所目は、幕下60枚目格付け出しだった石川県の大先輩・元横綱輪島の同15場所目、前相撲からだった春場所の尊富士の同10場所目を抜く史上最速優勝だ。新入幕の初場所から2場所連続V争い。間近で賜杯を見たのが「夢から目標に変わった瞬間でもあった」と振り返る。春場所は尊富士に新入幕優勝を許し「やっぱり優勝したかった」。そんな悔しさを成長の糧にし、尊富士に続くちょんまげ力士による優勝の快挙を達成した。

 3場所連続2桁勝利で新小結優勝。高田川審判部長(元関脇安芸乃島)は「最高の相撲。尻上がりによくなった」と内容を絶賛した。名古屋場所(7月14日初日、ドルフィンズアリーナ)が大関とりとなる可能性については「基本的には三役に上がってからの3場所。その前は加算されない」と否定的で、今場所が起点だと説明。一方で「何が起こるかわからない」と含みももたせた。

 石川県津幡町出身。能登半島地震の被災地にも明るいニュースを届けた。祖父は仮設住宅で暮らす。「優勝する姿を石川県の方に見せられて本当にうれしい」と喜んだ大の里は「これからも親方の言うことを守って、稽古に精進して上へ上へと頑張りたい」と誓った。新時代の到来を予感させる歴史的Vは、まだ序章に過ぎない。

  ◇  ◇

 ◆大の里泰輝(おおのさと・だいき=本名中村泰輝)2000年6月7日、石川県津幡町出身。新潟・海洋高から日体大に進み、1年で学生横綱。3、4年で2年連続アマチュア横綱。23年夏場所に幕下10枚目格付け出しで初土俵、同年秋場所新十両。24年初場所新入幕、今場所が新小結。優勝1回。殊勲賞1回、敢闘賞2回、技能賞2回。得意は突き、押し、右四つ、寄り。192センチ、181キロ。

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