霧馬山 本割&優勝決定戦で逆転V 遊牧民時代は裸馬乗りこなし「足腰とバランスが良くなった」

 優勝賜杯を手にする霧馬山(撮影・北村雅宏)
 霧馬山(右)は大栄翔を下し優勝決定戦に持ち込む
 霧馬山(右)は突き落としで大栄翔を下し初優勝を決める
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 「大相撲春場所・千秋楽」(26日、エディオンアリーナ大阪)

 新関脇霧馬山が12勝3敗で念願の初優勝を飾った。本割で2敗だった小結大栄翔を突き落として並ぶと、優勝決定戦でも突き落としで物言いがつく際どい勝負を制して逆転した。初場所の11勝に続く好成績。モンゴルから来日して8年、夏場所(5月14日初日、両国国技館)では、師匠の陸奥親方(元大関霧島)の番付に並ぶ大関とりに挑む。

 天を仰いだ。息を吐いた霧馬山の顔がホッと緩んだ。「最高でした」。物言いがついた優勝決定戦。軍配通りの判定で自分の名が聞こえた。逆転でつかんだ初賜杯。「相撲部屋に入った時の最初の夢がかなった」。土俵下では目を潤ませ、タオルで目元を拭った。

 驚異的な足腰が連勝を引き寄せた。本割は大栄翔ののど輪に追い詰められて土俵際で弓なりに。万事休すと思われた瞬間、体を開いて右から突き落とし、相手を飛び出させた。「最初の相撲はすごい緊張があったけど、二番目はここでやってやるぞという気持ちだった」。落ち着きを取り戻すと、決定戦でも押し込まれながら右足一本で残っての突き落とし。薄氷の2番をいずれもものにした。

 モンゴルの遊牧民の一家に生まれ育った。少年時代3カ月間の夏休みは、移動式住居のゲルで生活。鞍も着けずに裸馬を乗りこなし、約1000頭の羊や馬、牛、ラクダの世話を手伝った。「それで足腰とかバランスが良くなったって。自分の仕事だったので当たり前だった。その時の夏休み、一番楽しかったね」。空に目をやって振り返る故郷の環境が、力士として最高の武器を授けてくれた。

 躍進の要因には、守るべき存在ができたことも大きかった。新十両になった約半年後の2019年8月に同郷のホラン夫人と結婚。翌20年2月には長女も誕生していた。確かな結果を残すまでは…と心に決めていたが、賜杯を抱き、ようやく胸を張って愛する家族をお披露目できる。

 陸奥部屋としても初めての優勝。入門した8年前は「何もわからない時があった」という霧馬山は「一番初めに親方にあいさつしたい」と師匠孝行を喜び、「うれしい。相撲部屋に入ってよかった」と笑みがこぼれた。

 初場所で11勝、今場所を12勝で制し、夏場所は大関とりがかかる。師匠に並ぶ番付を「同じ大関って言われたらカッコいいかな」とはにかみながらイメージする26歳。駿馬(しゅんめ)のごとく、看板力士の座に駆け上がる。

 ◆1差での千秋楽直接対決からの逆転V 1差で追う力士が、千秋楽の直接対決に勝って優勝決定戦に持ち込んだケースは、今場所が32度目。本割と決定戦を連勝しての逆転優勝は、17年秋場所の日馬富士(対豪栄道)以来11度目(1場所15日制が定着した1949年夏場所以降。3人以上の優勝決定戦は除く)。

 ◆霧馬山 鉄雄(きりばやま・てつお)

 ★本名 ビャブチュルン・ハグワスレン

 ★生年月日 1996年4月24日

 ★出身地 モンゴル・ドルノド県セレゲレン

 ★スポーツ歴 バスケットボール、モンゴル相撲、柔道

 ★初土俵 2015年5月

 ★しこ名の由来 師匠・陸奥親方の現役時代の霧島から「霧」をもらい、遊牧民で馬に乗っていたことから

 ★目標の力士 元横綱日馬富士

 ★好きな食べ物 肉

 ★ニックネーム ハグワ

 ★サイズ 身長186センチ、体重140キロ

 ★血液型 O

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