“かなだい”悲願の初V 高橋大輔は全日本史上初2冠「36歳になっても成長できる」

 村元哉中(左)と共に、金メダルを手に笑顔を見せる高橋大輔(撮影・高部洋祐)
 熱演する村元哉中、高橋大輔組(撮影・高部洋祐)
 演技のフィニッシュで転倒
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 「フィギュアスケート・全日本選手権」(24日、東和薬品ラクタブドーム)

 来年3月の世界選手権(さいたま市)代表最終選考会を兼ねて行われた。アイスダンスではリズムダンス(RD)首位の“かなだい”こと村元哉中(29)、高橋大輔(36)組=関大KFSC=が、フリーダンス(FD)で最後のリフトが崩れるミスがあったが、合計186・61点を出し、結成3季目で初優勝。大会5連覇を目指した小松原美里(30)、尊(31)組(倉敷FSC)を制し、2年連続の世界選手権代表を決定的とした。高橋は全日本選手権史上初となる男子シングルとアイスダンスの2冠を達成した。

 衝撃の結末は、数分後に歓喜に変わった。キスアンドクライで深々と頭を下げた“かなだい”は恥ずかしそうに顔を覆った。北京五輪代表で4連覇中の小松原組をRD、FDとも抑えた完全優勝。「最高」のはずのクリスマスイブに「今日はやけ酒しようかな」と高橋がいじけると、村元は「私は最高のクリスマスイブ」と笑った。

 天国と地獄を行き来した。FD曲「オペラ座の怪人」の最終盤のリフト。フィニッシュ寸前に高橋が持ち上げた村元を降ろそうとした瞬間、糸が切れたマリオネットのように2人は崩れ落ちた。予想もしなかった事態に、演技後に頭を抱え込んで、高橋は「やっちゃった」と涙をにじませた。立ち上がれないパートナーを、村元が「大丈夫、大丈夫」と抱き起こした。

 「踏ん張っていて降ろした瞬間に(体を)持っていかれた。気合が足りなかった」と高橋。初出場の20年はRDの公式練習で村元が左膝を負傷。昨年はRDで高橋が転倒と、鬼門の大会でもあった。しかし、円熟期を迎えた今年は違う。転倒の2点減点があっても小松原組に10点以上差をつける地力があった。

 今季、2人のスタートは少し遅れた。「僕が(現役を)続行するかどうか決められなかった」と高橋。ただ“かなだい”3季目を決断してからは早かった。夏には東京の有名スクールで社交ダンスに取り組み、演技の幅を広げた。村元を支える高橋は氷を降りても筋力トレーニングを続けてきた。迫力も華も増し、この日も2つのリフトやツイズル、スピンで中盤までは2人とも最高のレベル4を獲得した。

 男子シングルで過去5度、全日本王者になった高橋は、91回を数える全日本史上初めてアイスダンスとの2種目を制覇した。「シングルをやっている時には、アイスダンスの表彰台の中央に立つなんて想像もしなかった」と誰より本人が目を丸くする。

 “2冠”の実感はあまりない。しかし、何よりうれしかったのは「36歳になっても、まだまだ成長できると実感した」こと。“かなだい”の成長が「自分へのいいクリスマスプレゼントになった」とサンタに感謝した。

 ◆全日本史上初のシングル&アイスダンス優勝 高橋はシングルで過去5度、全日本王者になっている。シングルとアイスダンスでの優勝は、91回目の大会で史上初の快挙。ペアでは過去に男子の小林正水、天野真の2人が男子とのダブル優勝を果たしている。

 ◆高橋大輔(たかはし・だいすけ)1986年3月16日、岡山県倉敷市出身。8歳でスケートを始め、岡山・倉敷翠松高時代の02年世界ジュニア選手権で日本男子初の優勝。関大に進み、06年トリノ五輪8位入賞。10年バンクーバー五輪で日本男子初のメダルとなる銅メダル。同年の世界選手権で日本男子初の優勝。14年ソチ五輪で6位に終わり、同年10月に引退。18年7月に現役復帰し、同年12月の全日本選手権で2位。20年にアイスダンスに転向した。22年3月の世界選手権16位。165センチ。

 ◆村元哉中(むらもと・かな)1993年3月3日、兵庫県明石市出身。5歳からスケートを始め、14年シーズンにシングルからアイスダンスに転向。15年シーズンからクリス・リードとコンビを組み、同年の全日本選手権から3連覇。18年四大陸選手権で日本勢初のメダルとなる銅メダルを獲得。同年の平昌五輪で15位。同年8月にコンビを解消した。162センチ。

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