白鵬全勝優勝「これでまた進める」進退懸けた場所「肉体的にも精神的にも追い込まれた」
「大相撲名古屋場所・千秋楽」(18日、ドルフィンズアリーナ)
横綱白鵬(宮城野)が大関照ノ富士(伊勢ケ浜)との9年ぶり6回目の千秋楽全勝対決を制して、7場所ぶり45回目の優勝を飾った。6場所連続休場を経て、進退問題を抱えながら迎えた今場所。1つ1つ白星を重ねるたびに外野の声を黙らせた。復帰場所を最高の成績で締めくくってみせた。
優勝力士インタビュー前には四方に丁寧に礼をした。「最高です」と第一声。「まさか、この歳で全勝優勝なんてできるとは、場所前は思わなかったので本当にホッとしています」と土俵上とは違う温和な表情を見せた。
鬼になった。モンゴルの後輩・照ノ富士とは17年夏場所以来、4年ぶりの対戦。立ち合い前から激しいにらみ合い。時間いっぱいになっても、にらみ合い。顔は紅潮。鬼の形相で厳しい視線をぶつけた。
先に腰を下ろしたのは照ノ富士。白鵬が遅れて腰を下ろす。長い時間を経て、迎えた立ち合い。白鵬は右で張って左肘で激しいかち上げ。続いて張り手の応酬。右を差して捕まえると左からの小手投げを執拗に繰り返した。相手を土俵にはいつくばらせると、右こぶしをふりあげて力強くほえた。顔は鬼のように真っ赤だった。
「右膝がボロボロで言うことをきかなかったので、この一番にすべてを掛けようと思って気合いをいれてやりました」と優勝を決めた一番を振り返った。
進退をかけた場所。順調に15の白星を重ねたわけではなかった。「(初日に)勝って、『よし』という気持ちになりましたし、これで戦えるといういう気持ちになりました」。ピンチはあっても、負けなかったのが強さ。「取りこぼさないギリギリの相撲で勝っていくことがこの優勝に繋がったと思います」。
客席からは家族が見つめた。優勝が決まった瞬間、涙を流していた。「近い距離でやってもらえたし、4歳の娘がいちばん下。ようやくパパがおすもうさんだって分かってくれた。それをいい形で見せることができて、覚えてくれればいいんですが、よかったです」と話した。
3月に右ひざを手術した。当時を「迷いましたけど。二度と土俵に上がれないんじゃないかという思いで臨みましたけど、(手術して)よかったです」と振り返る。
進退が懸かった場所。プレッシャーは半端ではなかった。
「本当に肉体的にも精神的にも追い込まれた状態でしたけど、名古屋には15年前、新横綱で来ていますし綱とりの気持ちというか、初心というか、そういう気持ちで臨めたのが結果にもつながったし、進退という漢字の意味は理解できなかったんですけど、6月に入ってから進むのか、止まるのかという意味に理解しました。これでまた進めるので良かったです」
また、進める。新たな目標を問われて「これで899勝。横綱として。あと1勝で900勝。1勝を目指して頑張っていきたいと思います」。その強さは健在。1つ1つ、白星を重ねていく。