森会長辞意 トップの暴走を止められなかった責任は重い【記者の目】

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が女性蔑視と取れる発言をした問題の責任を取り、辞意を固めたことが11日、分かった。12日午後からの評議員、理事を集めた合同懇談会で表明する。後任は日本サッカー協会元会長で、選手村村長を務める予定だった川淵三郎氏(84)の就任が確実に。これまでさまざまな問題が噴出してきた東京五輪は、開幕半年前に運営のトップが交代するという異常事態となり、開催に向けてさらなる難局に突入する。

 常に舌禍の危険性をはらんできた森会長の物言いだったが、年明けから一層不安定さを増していた。明らかに歯止めが掛からなくなっていたトップの暴走を止められなかった組織委を含めた関係団体の責任は重い。

 森氏は2度目の緊急事態宣言発令が決まった1月7日は「まったく不安はない」と話していたが、同12日に急にトーンが変わった。都内で行われた講演で「何がどうなるか分からない。五輪に対してどういう判断が下されるか。私の立場では、今年難しいとは口が裂けても言えない」と、再延期や中止への含みを持たせた言い回しになった。

 10日に各社の世論調査が発表され、約8割が今夏の開催に否定的との数字が出た。組織委関係者が「あの数字は大きかった。この数字のままでは開催は難しい、と」と振り返るように、危機感から漏れた言葉だった。

 その後も暴走は続いた。1月28日、バッハ会長との電話会談後の取材対応では大会の前提である「安心安全」の基準を問われ、「基準があるかといえば、ない」と述べ、2月2日の自民党会合では「コロナの状況がどうであろうと必ずやる」と強行開催を示唆した。発言の度に世論の反発を招いていた流れでの同3日の女性蔑視発言だった。

 辞任の決定打となったのは4日の謝罪会見。「面白おかしくしたいから聞いてるんだろう」とあからさまに不機嫌な態度を見せ、火に油を注いだ。この会見を、組織委は後の声明で「会長自身も発言を撤回し、深くお詫びと反省の意を表明致しました」と記した。

 そして、外堀が埋まり、森氏自身が辞意を示すまで、内部から辞任を求める動きはほとんどなかった。世間の風を読み切れず、遅きに失した幕引きが、今夏の開催へ大きな影を落とした。(デイリースポーツ五輪キャップ・大上謙吾)

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