毎晩送られる医療従事者へのエール 元デイリー記者・疋田さんがスペイン緊急リポート

 非常事態宣言で休業を余儀なくされたカフェ
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 新型コロナウイルスの感染者数が12万人を超え、米国に次いで世界2位となったスペインの今はどうなっているのか?元デイリースポーツ記者で、スペイン・バルセロナで2年間生活する疋田有佳里さんが、非常事態宣言が出て半月以上が経過した街の状況を緊急リポートする。

 3月14日から始まった隔離生活。不要不急の外出が見つかれば、罰金は最低でも600ユーロ(約7万2000円)、2人以上で出かけるのもダメ…。国民的スポーツと言われるサッカーはもちろん、バスケット、フットサル、私が参加している野球チームの活動も、すべて停止。

 バルセロナに所属するメッシ選手が、3月14日に投稿したインスタグラムで、「指示に従うことにより、この状況を効率的に打破することが可能になるでしょう。それぞれが責任を持って、家にいる時です」と言っていたが、それでも不要の外出で罰金を取られている人が、そこそこいるのだとか。

 外出は限られ、私が唯一、外に出られる機会が買い物だ。家を出るのは多くて週に1回、片道10分のスーパーへ買い物に行くだけ。不要不急で罰金を取られないよう、大きな買い物袋を目立つように持って出かけると、そこには今まで見たこともないような光景が広がっていた。バルセロナで生活を始めて2年、一度も見たことないマスク姿の人ばかり。しっかり手袋もはめて。

 スーパーの入り口では、入店待ちの買い物客が1メートル間隔で列を作っている。入場制限をして、人を密集させないようにするためだ。入場前にはビニールの手袋が配布され、買い物中、スーパーを出るまでは必ず着用することが義務付けられている。

 自分の順番がやってくると、スーパーの店員が消毒してくれた買い物カートを渡してくれ、ようやく中に入れるのだが、いざ店に入ると、至近距離で人とすれ違ったり、その密集ぶりはなかなかのもの。今でも感染者が増えている中、自分にとってはスーパーが最大の感染源ではないかとの疑いは隠せず、要警戒の場所でもある。

 そのスーパーでは非常事態宣言が発動される以前はトイレットペーパーなどの紙類、肉類、小麦粉、麺類などが“爆買い”によって、売り場からきれいさっぱりなくなっている様子がニュースでも報じられた。それを見て不安に思う人たちがまた、開店前から並んで、同じように買い占める。

 今でこそトイレットペーパーも山積み、その他の商品もしっかり補充され、欲しいものが買えないかも、という不安はほぼなくなったが、日本からのニュースを見ると、どこの国でも行動パターンは同じなんだと感じてしまった。

 少しばかりおもしろいデータを見つけたので紹介する。ニュースサイト「Publico」によると非常事態宣言が発令された直後、前週に比べスーパーでビールの売り上げが78%増加したという。少しでも楽しみながら隔離生活を送れるよう、ビールが国民の不安を中和する役目を果たしているそうだ。

 またスペイン紙「EL PAIS」によると、ビールに合わせるようにポテトチップスは87%、チョコレートの売り上げは79%、おつまみとして大人気のオリーブは94%増加。小麦商品は196%と大幅上昇をみせたという。スペインの人々は隔離生活の時間をつぶすために家でお菓子やパンを手作りし、ビールとおつまみで自宅バーを楽しんでいると分析されている。

 死者が1万人を超え、12日までだった非常事態宣言は26日まで延長された。毎晩午後8時になると、それぞれのベランダから医療従事者へ送る大きな拍手のエールや音楽が聞こえてくる。毎日仕事で感染の危機にさらされていても、親切に接してくれるスーパーの店員たち。心配して連絡してくれる友人たち。非常事態宣言のさなか、楽しむことを忘れない国民の明るさに励まされることも多いが、目の前に広がる現実はかなり厳しいものだ。

 先日、ルームメートの兄が病院の駐車場で検査を受けた。翌朝に「陰性」の結果が出てひと安心したが、感染拡大を防ぐためにも気を緩めることはできない。

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