羽生結弦「限界の先へ」 突然のシーズン閉幕にも前向き、開催へ尽力のISUに感謝も

 国際スケート連盟(ISU)は11日(日本時間12日)、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、フィギュアスケートの世界選手権(18日~21日・モントリオール)を中止すると決定した。日本からは男子で冬季五輪2連覇の羽生結弦(25)=ANA=や宇野昌磨(22)=トヨタ自動車、女子で紀平梨花(17)=関大KFSC=らトップ選手がエントリーしていた。羽生は日本スケート連盟を通じ「今の限界の先へと行けるよう、練習していきます」とコメント。来季へ意欲を示した。

 どんなときも羽生は前を向く。同時に、周囲への気配りを忘れない。目指してきた大舞台が目の前から消えた直後でさえも、連盟を通して出した318文字のコメントには、羽生らしい温かさと優しさがあふれていた。

 中止は「残念」と表現しつつも、選手やファン、関係者の感染リスクを鑑み「安堵する気持ちもあります」と羽生。判断の遅れを指摘するのではなく、開催へ向け「ギリギリまで尽力」したISUに感謝の思いを伝えることも忘れなかった。

 東京・国立代々木競技場で予定されていた2011年大会が東日本大震災の影響で4月にモスクワで代替開催したことはあるが、世界選手権の中止は1961年以来59年ぶり。当時は開催地プラハに向かう航空機が墜落し、米国チーム全員が死亡するという悲惨な事故のためだった。

 ISUは「選手やコーチ、観客らの安全を考慮して決定した」との声明を出し、10月以降の年内に開催できるか検討するとしているが、10月末からは例年通りグランプリ(GP)シリーズが予定されている。大幅なスケジュールの変更がない限り、非現実的と言わざるを得ない日程だ。

 先行き不透明な状況に違いないが、羽生のコメントを締めくくったのは「来シーズンに向け、今の限界の先へと行けるよう、練習していきます」という前向きな言葉だった。

 理想と現実のはざまでもがいた今シーズン。昨年末はGPファイナル、全日本選手権と続けて戴冠を逃し「しばらく立て直らなかった」と語るほど心身ともに不安定な時期も経験した。2月の四大陸選手権、羽生がたどり着いたのは「心地よさを求めてフィギュアスケートをやっている」という信念。「クワッドアクセル(4回転半)を入れて、ギリギリの難易度まで目指し、シームレスな(滑らかな)ものを作りたい」。まさかの形で幕を下ろしたが、理想への決意を強くした1年でもあった。

 東日本大震災翌年、羽生は世界選手権初出場ながら銅メダルを獲得し、日本中を明るく照らした。2020年、そして21年。今は世界中が暗い話題に沈んでいるが、その先へと上り詰めた羽生は一体どんな姿を見せてくれるのか。その舞がまた、きっと未来を明るく輝かせる。

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