乙黒拓斗、日本男子史上最年少V 初出場19歳攻めまくって金字塔

 「レスリング・世界選手権」(22日、ブダペスト)

 男子フリースタイル65キロ級で初出場の19歳10カ月、乙黒拓斗(山梨学院大)が決勝でバジュラン(インド)を16-9で破って金メダル。日本男子としては1974年大会を20歳6カ月で制した恩師の高田裕司・山梨学院大監督(64)を上回る史上最年少で、五輪と世界選手権を通じて初の10代金メダリストとなった。57キロ級の高橋侑希(24)=ALSOK=と92キロ級の松本篤史(30)=警視庁=は3位決定戦に勝って銅メダルを獲得。女子55キロ級の向田真優(21)=至学館大=と59キロ級の川井梨紗子(23)=ジャパンビバレッジ=は決勝に進出した。

 痛めた右足首はとうに限界をこえていた。それでも乙黒拓は攻撃をやめなかった。「守ったら負ける。攻めるしかない」。アジア大会王者との決勝は、取って取られての壮絶な戦い。死力を尽くして世界一を勝ち取ると、マットを下りた先の通路で倒れ込んだ。試合中に右足首を捻挫したとみられ、極度の痛みで歩くこともできなかった。

 世界的には無名の19歳が、攻め一筋で強豪を次々となぎ倒した。組み手争いや間合いのはかり合いは最小限。向き合った瞬間のタックルを武器に、今大会では全5試合で10得点以上を記録。破壊的な攻撃力を見せた。

 ロシア選手との準決勝ではタックル返しで何度も失点した。攻撃的なレスリングはもろ刃の剣でもあったが、「勝ちたいので攻めるしかない。その一択」。トップ選手でも感じる返し技への恐怖を、すがすがしいまでに断ち切った。

 端正なマスク。プライベートでは女性アイドルグループの「乃木坂46」に熱中する今どきの大学生が、ことレスリングになると一変する。指導する高田監督は「こんな選手は見たことがない。強くて練習するから、これは本物」と評する。

 授業の合間にはトレーニングルームで一人黙々と筋トレ。今夏のオフは他の部員より早めに切り上げて大学へ戻り、自主練習に励んだ。70キロ級代表の兄・圭祐(21)も「弟は努力の天才」と舌を巻くほどだ。

 兄の後を追うようにレスリングを始めた幼いころ、「いつかは五輪に出たい」と思い描いた。夢はもう手の届くところにある。「決勝では失点が多かったし、改善点は多い。東京五輪はもっと難しい場所。上を見て高めていきたい」。無限の可能性を秘めた若武者が、2020年の主役候補に名乗りを上げた。

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