誤審防止のビデオ判定が普及 「五輪コラム」

 熱戦を展開中のリオ五輪では、多くの競技でビデオ判定が活用されている。五輪では過去に数々の疑惑の判定があり、金メダルを逃がした悲劇の名選手がいた。誤審防止のための「映像再審制度」は選手にとってもファンにとっても分かりやすい。再生映像を会場スクリーンやテレビに公開する競技では、ファンも判定に「参加」できる楽しみがある。

 ▽分かりやすいチャレンジ制度

 ビデオ判定でなじみ深いのがテニス、バドミントン、バレーボールなどの「チャレンジ制度」だ。ボールやシャトルの「IN」「OUT」の判定に疑義がある場合、要求(チャレンジ)に応じてボールやシャトルの軌跡の映像をCG化して公開する。テニスでは錦織圭の際どいショットの判定が何度も覆った。

 試合中断の多発を防ぐため、チャレンジ乱発の抑止策も講じている。テニスの場合は1セットで3回まで。チャレンジに失敗すると、アピール権の回数が減る。映像による再判定はファンにとってはスリルがあり、とりわけテレビ視聴者の受けもいい。

 レスリングの場合はちょっとユニーク。審判のポイント判定に疑問がある場合は、コーチが「ぬいぐるみ」をマットに投げ入れてチャレンジを表明する。モニター席で別の審判が映像をチェックして裁定。チャレンジが通ればポイントが取り消されるが、判定通りの場合は相手選手に1点が追加される。クレームはリスク覚悟だ。

 ▽「世紀の誤審」もう出ない?

 人間の目による判定には限界がある。五輪での「世紀の誤審」といえば、2000年シドニー五輪柔道のダビド・ドイエ(フランス)と篠原信一との決勝が有名だ。篠原の内また透かしが「一本」と判定されず、逆にドイエの有効となって篠原は敗れた。冬季五輪では長年、フィギュアスケートの「採点の闇」が深かった。

 判定の不明朗さはスポーツへの信頼性を損なう。五輪実施競技の見直しでは、判定疑惑を解消できない競技は五輪から除外される可能性があった。五輪に存続するためには、競技の公平性、透明性も問われるようになった。

 各競技で採点、判定方法を改善するルール改正が相次いだ。同時にビデオ判定導入も一気に進んだ。柔道では審判の判定は畳の外で常に監視されており、映像モニターでダブルチェックされる。

 体操の男子個人総合で内村航平が接戦の末に連覇を果たした時、「内村びいきの採点では?」との指摘があった。これに対し、敗れたオレク・ベルニャエフ(ウクライナ)は「点数はフェアで神聖なもの」と潔く反論した。現行ルールは技の難度、実施内容を技ごとにポイント化しており、ビデオを使って再判定することもある。体操採点の透明度は高まっている。(荻田則夫)

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