体操日本を甦らせた知られざる物語出版
体操のリオデジャネイロ五輪代表2次選考会を兼ねた全日本選手権が4月1日から国立代々木競技場で開幕する。5人で構成される男子団体の代表メンバーには、昨年の世界選手権個人総合で優勝した内村航平(コナミスポーツ)が既に内定。残り4枠を争う選考会が全日本選手権、NHK杯(5月、国立代々木競技場)、全日本種目別選手権(6月、国立代々木競技場)と続く。代表入りをかけた熾烈な争いが佳境を極める。
2015年に英国・グラスゴーで開催された世界選手権で優勝した男子団体。リオでの「金」がはっきり見えているが、一時は五輪のメダルに届かず低迷していた時期もあった。その日本が完全復活を遂げたのが28年ぶりの団体総合優勝を成し遂げた04年アテネ五輪だった。「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ!」の実況で記憶に刻まれた感動の金メダル。体操ニッポンを甦らせた知られざる物語を描いたノンフィクションが31日に出版された。
「鉄骨クラブの偉人オリンピアン7人を育てた街の体操指導者・城間晃」(浅沢英著、KADOKAWA刊)。アテネ五輪金メダリスト6人のうち冨田洋之、鹿島丈博、米田功の3人を育てた街の体操クラブのコーチ・城間晃氏に焦点を当てた作品である。アテネの「金」はいかにして生まれたか。そしてそのアテネ以来となる「金」を狙う現在の代表チームにも受け継がれる教えとは。
著者の浅沢氏は、関西を拠点に体操競技だけでなくボクシング、野球などの取材を続けているノンフィクションライター。アテネ五輪以前から城間氏を追い続け、報いの少ないジュニア指導者の足跡をここに記した。「体操大国ソ連を中心とした世界の体操界の逆を行く指導法を貫いて、金メダリストを育てた指導者の物語です。ふだんスポーツに興味を持たない方にも、ぜひ手にとっていただきたい一冊です」と語る。
城間氏は7人の五輪選手を育てた大阪・阿倍野区の体操クラブを退職し、07年に自らが主宰する「シロマスポーツクラブ」を松原市に設立した。リオ五輪には間に合わないものの、20年東京五輪を狙える有望選手が、今もまた「日本伝統の美しい体操」にこだわり続けた街クラブの指導者のもとから巣立ちつつある。



