首を傾げる巨人のセペダ獲得
【関本四十四「ひとにらみ」3】
広島カープには恐れ入った。27日の対巨人戦、延長十一回にエルドレッドの一発でサヨナラ勝ちしたけど、それまでは両軍ともに互角の戦いをしていた。
最後にあんな勝ち方ができるなんて、広島が力を付けている証拠だ。ひょっとしたら、今年は“コイの季節”で終わらないかもしれない。
その巨人、ちょっと首を傾げる補強をした。キューバの主砲、フレデリク・セペダ外野手(34)の獲得だ。
すでに巨人の1軍外国人出場選手枠は満杯(4人)だ。それにセペダは主に指名打者でプレーしてきた。どこで使うつもりなのか。
セペダはキューバ政府から海外移籍を容認されて日本にやってくる第1号だ。巨人、ひょっとしたら、日本球界を代表して窓口的な役割を果たそうとしているのかもしれない。
巨人の外国人枠(4人)の問題である。誰かを2軍に落とさなければ、セペダを使えない。いや、国を背負って来日するのだ。なんとしても使わなければならない。
現在、巨人には野手のロペス、アンダーソン、投手のマシソンにセドンがいる。普通、野手を獲得したのだから野手を落とす。こう考えがちだが、そうとばかりは限らない。今シーズンは4人とも、開幕からそれなりに活躍している。
この4人の中で、私が最も注目しているのはセドンだ。昨年、韓国で14勝(6敗)を挙げて最多勝に輝いた。それだけに“掘り出し物”と言ってはかわいそうだが、実際のところ、彼はこれまでの日本球界にはいなかったタイプだ。
193センチの長身から、変則的なフォームで左腕から多彩な球種を投げる。特筆すべきはすべて同じ投球フォームで投げることだ。極端な話、目をつぶっても大丈夫じゃないかと思えるほどだ。
以前、ドジャースで活躍したバレンズエラ投手を思い出した。同じ投球フォームからいろんな変化球を投げていたものだ。
さてセドンだ。打者のヒザ元に2種類のスライダー、カーブ、それにチェンジアップ、これらの変化球が決まるから134、5キロのストレートが凄く速く見える。ことに右打者がヒザ元のチェンジアップを見逃すとストライク、手を出すとファウルになる。
デビューとなった9日の広島戦(東京ドーム)がいい例だ。5連続を含む毎回の15三振を奪ったが、早め早めに打者を0‐2、1‐2と追い込んでは、ストレートを効果的に使っていた。
もちろん課題もある。キャンプ時から言われているクイック、セットなどだ。日本はスコアラー陣を中心に寄ってたかって、徹底的に分析をする。かなり進んでいるだろう。
一回りして、他球団がどんな対応をしてくるかだけど、私の見るところ、だいぶ改善されてきている。他球団が徹底的に分析するなら、巨人だって総出で対策を練る。
セドンは23日のDeNA戦で7回を1失点で2勝目をマーク。飛ぶボールもどこへやら。防御率2・01と安定している。29日からのヤクルト3連戦(東京ドーム)で先発するのは確実だ。
4+1はあくまでも5、1人が弾かれるのは必然の成り行きだ。さあ、変則左腕が快刀乱麻のピッチングで、2軍落ちのピンチを乗り切れるのか、楽しみだ。
(デイリースポーツ評論家)