新井、アニキと最後の競演はビンタ締め

 「阪神3-0DeNA」(9日、甲子園)

 誰よりも慕った“弟”は、特等席で最後を見届けた。4番・金本、5番・新井-。背番号6に降り注ぐ歓声をネクストバッターズサークルで抱きしめ、阪神・新井は引退試合を心に染みこませた。最大の見せ場は六回。2人による最後の競演だ。

 先頭の金本が中前打で出塁。新井の初球に二盗を決めた。アニキが二塁上で笑っている。燃えた。2ストライクと追い込まれながら、外角スライダーに食らい付いた。中前に落ちる安打で、二走の金本が本塁を狙う。好返球に阻まれ憤死したが、ともに過ごした時間を凝縮したように濃密な連打だった。

 新井の右肩は決して万全な状態ではない。「僕のわがままを聞いてくれた監督やスタッフの方々に感謝したい」。慢性的な右肩痛の影響で、9月24日に1軍選手登録を抹消された。懸命のリハビリを続けたが、痛みが完全に消えることはなかった。それでも、引退試合に出なければ一生の後悔となる。志願の出場であり、監督一同が思いをくんでの出場だった。

 試合前には、片岡打撃コーチの配慮で今季初めて金本と同じ打撃回りで練習した。引退セレモニー後には、ベンチ前で金本からほおをビンタされた。そのすべてが大切な時間だ。「(ビンタは)『頑張れ』ということでしょう。1日しっかりと(金本の姿を)目に焼き付けました」。

 鉄人の残した魂は、後輩たちが引き継いでいく。六回の金本憤死後、兄2人の姿を見た末っ子が追加点を挙げた。新井良の中前打で二走・新井が生還し、3点目。「盗塁や本塁への走塁を見て、いつも以上の気持ちで打った。あれこそ金本さんのプレースタイル」。セレモニーでは泣いていた。

 これでアニキと共有する時間は終わったが、残されたものにとって、金本の姿すべてが財産となる。

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