選手のパワー源“勝負メシ” 首位・楽天支える管理栄養士・長坂聡子さんに聞く
有観客での試合開催が解禁され、さらに盛り上がりを見せるプロ野球。そのファンの声援に応えるスーパープレーを見せる選手を支えるのが食事だ。パ・リーグ首位を走る楽天の管理栄養士・長坂聡子さん(40)に、選手を支える食事メニューのこだわりなどについて聞いた。
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選手の活躍の源である食事。大切なのは体と心の活力となることだ。1つは栄養素。丼ものと麺類を基本に、炭水化物を摂取。麺は食べやすさがあり、丼ものはご飯とおかずが合わせて食べられる。
長坂さんは「食欲がない選手でも比較的に食べやすく、一杯でいろいろ(栄養が)取れるように考えています」と話し、その食べやすさに工夫を凝らす。
食事時間が取れるホームでは数種類のおかず、揚げ物、鶏肉と卵でタンパク質も取れるオムライスなど、どの組み合わせでも十分な栄養が取れるメニューを用意。逆に食事時間が短いビジターでは、素早くつまめるメニューを整えている。
「ビジターでは小さめのおにぎりも用意します。メニューは一口の大きさまで指定しますね。例えばお肉の一切れが大きいと、選手がつまようじで手軽に食べられないので」
どうすれば選手が食べやすいか-。大きさ、内容、味付けにも細かな配慮をする。暑くなるこの時期は味付けを濃いめに調整。食欲が落ちても食べやすいカレー味にしたり「見た目が涼しげになるように夏野菜を入れたりしています」という。
もう1つの重要な点。それはストレスのない食事環境だ。栄養の摂取は必要不可欠だが、その日のコンディションなどで量を食べられない選手もいる。
「試合前の食事は押しつけずサプリメントなどでの補食も指導します。選手個々に合わせて投手ならばこう、投手でもこの選手はこうというのを把握しています。試合前の食事はストレスにならないことが大事なので」
ビジターでのメニューも管理栄養士が修正を加えるが、各球場の名物メニューは残し、「選手が『これがうまい』と話しているのは聞き逃さず、メニューに必ず入れるようにしています」と話す。
そんな発想から定着したのが豚汁だ。元々はビジター球場で出されていたメニューだが、選手から好評だったことからホームでも出されるようになった。
良質なタンパク質、疲労回復効果のあるビタミンB1を含む豚肉の料理は積極的に出されているが、中でも豚汁は「野菜のビタミンとかもすべて汁に溶け込んで摂取できるんです」と栄養の宝庫と言える万能食でもある。
そうした指導は、選手たちの食への意識も高めた。「サラダはいろんな種類を出しても、ブロッコリーとトマトが真っ先になくなります。野菜の中でも栄養価が高いからですね」。グラウンドで見せるファンをわかせるプレーの数々。それを支える食事の質も、チームを支える大きな“戦力”となっている。