「中日２－６阪神」（５日、バンテリンドーム）

　阪神きっての幸運の持ち主がチームに勝利を呼び込んだ。来日初登板となった阪神のグラント・ハートウィグ投手（２７）は１回無安打無失点。さらに初勝利も手にし、「良い内容ではなかったけど、最後はなんとか粘れてゼロに抑えられたよ」と充実感をにじませた。

　２点ビハインドの七回。虎党の大声援を背に受け、マウンドへ上がった。念願の初舞台だったが、この日は制球に苦しんだ。先頭の細川にフルカウントから四球を与え、ボスラー、チェイビスにも四球。３連続四球で無死満塁を招いた。

　スイーパーの曲がり幅が大きすぎることが制球を乱した原因。「ゲームの中である程度、修正はできていたよ。特に（最初は）インコース、アウトコースどちらにも感覚にズレがあった」と直後にスイーパーの感覚を修正した。

　山本に対しては４球目の外角スイーパーで空振り三振を奪った。一息ついたが、１死満塁とピンチは続き、打席には石伊を迎えた。ここは低めツーシームで引っかけさせて三ゴロ併殺。見事にピンチを脱した。

　驚いたのはその直後だ。降板後の八回に佐藤輝が逆転３ランを放ち、初勝利の権利が転がり込んだ。右腕は３日のウエスタン・オリックス戦（ＳＧＬ）でも好投。降板直後に飛び出した前川の満塁本塁打などで８点差を追い付いた。

　この日も同じような形で幸運の初勝利に恵まれた。「（幸運の持ち主）かもしれない。ちょうどファームの試合もこれホームランを打つんじゃないかって通訳と話していたら、ほんとに前川がホームランを打ったんだ」。偶然とはいえ、すごいこと。これ以上ない“ゲンかつぎ”だ。

　新助っ人の初星で今季６０勝目。両リーグ最速で６０勝に到達し、勢いはとどまるところを知らない。実力もセ界最強のチームに幸運まで加わったら無敵だ。これからも虎党のハートを高鳴らせ続ける。

　◆グラント・ハートウィグ（Ｇｒａｎｔ　Ｈａｒｔｗｉｇ）１９９７年１２月１８日生まれ、２７歳。米国出身。１９６センチ、１０６キロ。右投げ右打ち。投手。マイアミ大を経て、２１年にメッツと契約。２３年６月１９日のアストロズ戦でメジャーデビュー。メジャー通算３２試合で５勝２敗２ホールド、防御率５・１４。