金本虎、投打の悪循環を断ち切るには…セイバーメトリクスから読み解く

 交流戦後は5勝14敗と低迷している阪神。その要因はズバリ野手陣にあります。他の5球団の平均得点が4点以上に対し阪神は2・26。本塁打数をはじめ打撃指標は悪い方の意味でケタ違いです。

 投手の指標を見ると、交流戦後の防御率3・78はリーグ3位。前半の課題として指摘していました救援陣は、防御率を2・77とし、改善の兆しを見せています。

 また、奪三振率8・86、被打率・237はリーグ1位です。先発防御率4・39は一見すると悪化しているように映りますが、先発のFIP(※1)は3・52でリーグ2位という好成績。これが意味することは何でしょうか。

 投手の能力が高いのにチームの失点が多くなるのは、守備による失点の影響が大きいことを物語っています。これも以前から指摘していたことです。

 さらには、先発投手の球数の増加が顕著になってきています。セイバーメトリクスにおいて、投手の酷使度合いを示す指標のPAP(※2)で阪神の投手陣を計測すると、かなり酷使されていることが判明しました。

 メジャーでは、PAPが1シーズンに20万を超えるといつ壊れてもおかしくないとされています。阪神のPAPは抜きんでて大きいことがわかるかと思います。中4日で先発を回すメジャーと単純比較はできませんが、3年連続で30万を超えてしまっている藤浪の蓄積疲労が心配です。

 今季はシーズン半ばですでに40万超え。球速は出ているのに空振りが取れずに苦戦をしています。これはフォームの崩れによって球の見極めが簡単になっているものと思われます。

 先発投手陣のポテンシャルは高いのに、それを援護するどころか、大きな負担を背負わせている野手陣。それに疲弊して結果を残せなくなった先発投手陣。その悪循環を断ち切るために必要なこと-。

 守備範囲の改善を図るための遊撃・大和の起用、さらにはチーム出塁率を高めるため、7月月間のOPS(※3)が・952の高山、1・024の福留を1、2番に据えるなどの大胆な配置転換はいかがでしょうか?(統計学者)

  ◇  ◇

 ※1 FIP 奪三振、与四死球、被本塁打という明らかに投手の責任だと考えられる数値をもとに出した「投手力」の指標。

 ※2 PAP (先発投手の投球数-100)の3乗。1シーズンで20万を超えるとけがのリスクが増大するとされている。

 ※3 OPS 出塁率+長打率。数値が.834を超えると「非常に良い」の評価。

  ◇  ◇

 鳥越規央(とりごえ・のりお)統計学者。大分県中津市出身、47歳。野球統計学(セイバーメトリクス)を駆使した著書は『本当は強い阪神タイガース』(筑摩書房)『勝てる野球の統計学』(岩波書店)など多数。所属学会はアメリカ野球学会、日本統計学会など。日本セイバーメトリクス協会会長。

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