原監督に見たG指揮官の意地とプライド

6月30日対広島の7回巨人1死二塁、坂本勇人が遊ゴロに倒れベンチで鬼気迫る表情を見せる巨人・原辰徳監督=東京ドーム(撮影・開出牧)
6月30日対広島戦、サヨナラ勝ちしスタンドの祝福に応える巨人・原辰徳監督=東京ドーム(撮影・開出牧)
6月30日対巨人、9回巨人1死一三塁、亀井義行にサヨナラ左犠飛を打たれ、歓喜の巨人ベンチを背に引き揚げる広島・黒田博樹=東京ドーム(撮影・開出牧)
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 宿敵黒田を打つんだ!と言わんばかりにすごい形相でバッティングポーズをとる巨人・原辰徳監督(56)。喜怒哀楽の豊かな指揮官だが、いつにも増して、鬼気迫る表情を見せた。

 原監督が写真の表情を見せたのは、6月30日の対広島戦七回1死二塁、坂本が広島の先発・黒田の真ん中ツーシームを引っかけて遊ゴロに倒れた直後だった。三塁側カメラ席からマウンドの黒田を撮影していた私は、原監督にレンズを向けシャッターを切った。黒田攻略に苦しむ巨人ベンチを一枚の絵にするには絶好のチャンスである。想像以上のリアクションに、指揮官の並々ならぬ闘志が垣間見えた。

 0-0の七回、先頭の長野が左越え二塁打を放ち、この試合初めて得点圏にランナーを進めた。無死二塁。バントで送り、1死三塁にすれば、犠飛か内野ゴロでも先制点を奪える展開だ。しかし2番立岡にバントのサインはなし。強振してあえなく一塁ゴロに倒れた。あくまでも、黒田を打つ、という指揮官の強いこだわりを感じる采配だが、3番坂本も遊ゴロに倒れ、強気の采配は空回りした。続く阿部は四球で出塁したものの、結局亀井が二ゴロに倒れ先制の好機を逃した。

 6回までわずかに1安打。8年ぶりに対戦した、かつての巨人キラー・黒田(04年から07年の4年間で13勝)は、米大リーグでの実績(7年間で79勝)をひっさげ帰ってきた。今季は環境の変化に苦しみながらも、この試合までに6勝を挙げ、オールスターファン投票では、巨人・高木勇人を5万票以上も引き離す断トツ1位。もはや格の違いすら感じさせた。

 この日の黒田はツーシームとスライダーなどでコーナーを突き、三振と内野ゴロの山を築いていった。七回2死一、三塁、亀井を二ゴロに打ち取った時は、貫禄のガッツポーズを見せた。八回に味方の援護点を受け、悠然と九回のマウンドへ向かう黒田の姿は自信に満ちていた。

 九回、先頭の長野が右前打で出塁した。代走に鈴木尚。バントで確実に二塁に送れば一打サヨナラだ。しかし、ここでも指揮官は2番・立岡に打たせた。結果は三振。強気の采配はまたも裏目に出た。重い空気が流れたが、坂本が中前打を放つとゲームの流れは再び巨人へ。1死一、三塁、阿部が甘いツーシームを逃さず同点の右前打。そして亀井の左犠飛で三走・坂本が生還。巨人ファンで埋め尽くされた東京ドームは、劇的なサヨナラ勝ちに酔いしれた。打たれた広島・黒田は歓喜の巨人を背に、ベンチ裏へ消えた。

 執拗なまでに強攻策に出た原監督だが、もし負けていれば、辛らつな采配批判が待っていただろう。6月は試合前まで6勝13敗で、チーム打率も2割3分台に低迷していた。確実に点を取って勝ちにいかなければならないチーム状態だった。しかし、堂々と勝負してくる宿敵黒田に対して、小細工はできなかった。そこに巨人の指揮官としての意地とプライドを感じた。

 広島・黒田の球数は118球。先発投手の球数制限(100球)のある米大リーグでは、お目にかかれない名勝負だった。(写真と文=デイリースポーツ・開出牧)

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