【芸能】あぶデカ最終作 背景にある事件

 舘ひろし(65)と柴田恭兵(64)の主演映画「さらば あぶない刑事」が来年1月30日から全国ロードショー公開される。定年退職を目前にしたタカ(舘)とユージ(柴田)が史上最凶の敵と戦うシリーズ最終作ということでメディアの注目度も高い。11月16日に都内の東映本社で行われた試写会では補助席を出しても入りきれず、“満員御礼”後も続々と詰めかけた人を対象に別室で時間をずらしてダブル上映するという盛況ぶりだった。

 というわけで、年末から年明けにかけて同作に関する報道は続くだろうから、作品そのものの紹介はお任せするとして、ここではその背景にある日本映画史的な“事件”に注目したい。八十路(やそじ)を前に“復縁”した、村川透監督(78)と名カメラマン・仙元誠三氏(77)による奇跡のタッグ復活だ。

 新作「さらば~」の製作プロダクション「セントラル・アーツ」は、1989年11月に死去した松田優作さん(享年40)が所属した芸能事務所でもあった。その前に設立されていた配給会社「東映セントラルフィルム」(77年~88年)は70年代後半から80年にかけて、松田さん主演、村川監督、仙元氏撮影による快作を連発した。

 試写室で2016年公開作を見ながら、先述の東映セントラル旗揚げ作「最も危険な遊戯」(78年)の記憶がよみがえった。例えば暗闇での銃撃戦だ。村川×仙元コンビの映像はブランクを感じさせない緊張感にあふれ、映画的な“闇”や“臭い”に東映セントラルのDNAを感じた。

 東映セントラルの時代-。「最も~」から「殺人遊戯」「処刑遊戯」と続く遊戯シリーズに、「蘇る金狼」「野獣死すべし」。松田さん、村川監督、仙元氏は78~80年の3年間に、この5作でもって“黄金のトライアングル”を形作った。松田さんの死後、村川×仙元コンビは「あぶない刑事リターンズ」(96年)を経て、今回が20年ぶりの顔合わせとなる。今年82歳となる製作総指揮・黒澤満プロデューサーの思いがあったればこそだろう。

 東映セントラルフィルム&セントラル・アーツの代表にして、松田さんと公私ともに密接な関係にあった黒澤氏(79年の“NTV火曜9時枠”から時代を超える不朽のドラマ作品となった「探偵物語」もプロデュース)。映画、テレビで作品を支えた村川監督と仙元氏。さらに、松田さんの盟友で「探偵物語」などでもおなじみの山西道広(67)の姿をスクリーンで拝見するのも感慨深く、あの時代の“同窓会”的な側面を新作から感じた。

 また本題からはそれるが、70年代の日活ロマンポルノに名作を残した黒澤氏と村川監督という意識を持って、当時の代表的な女優の1人、宮下順子(66)の意外な場面での登場を見ているうちに、映画史の絡み合った枝葉を感じたりもした。

 ここまでタカとユージに触れてこなかったが、映画史の因縁というテーマでもって話を続けると、舘はクールス時代の映画デビュー作「暴力教室」(76年、東映)で主演の松田さんと対峙して全く引けを取らない存在感を発揮し、柴田は「最も~」の冒頭、チンピラたちが松田さんをいたぶる雀荘のシーンでサングラスをしてカメオ出演。同じく東映セントラルのヒットシリーズ「ビー・バップ・ハイスクール」(85~88年)の仲村トオル(当時、松田さんに続くセントラル・アーツ所属俳優)は50歳になった今も後輩キャラでいい味を出している。いずれの存在にも、松田さんや東映セントラルとつながる縁がある。

 関係者は「日本の刑事ドラマを変えた『あぶデカ』ですが、2人が定年を迎えて終わりにしたいという思いから生まれた集大成」と、黒澤氏はじめスタッフ、キャストの思いを代弁。「集大成」という強い意識が村川×仙元コンビを現場に呼び戻したのだと思う。

 同時に「あぶデカ」そのものには疎くても、かつて松田×村川×仙元トライアングルのフィルムに熱狂しながら映画館から遠ざかっている中高年世代の男性にアピールできる作品-と感想を伝えると、「そうですね!」とうなずかれたので、本稿の結論はそういうこにして、筆を置く。

 (デイリースポーツ・北村泰介)

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