【野球】巨人・高木勇「僕は僕」の意味

 ドラフト3位ルーキーの高木勇人投手が、26日のヤクルト戦で9勝目を挙げた。白星は8月26日以来1カ月ぶり。「野手の皆さんに感謝しています」。残り5試合(26日終了時点)を考えると、これがシーズンの最終登板の可能性もある。

 初回に3ランを打たれたが、二回以降立て直し、五回に味方が勝ち越しに成功。5回3失点。抜群の内容とは言えないが、勝たなければヤクルトにマジックが点灯する状況というプレッシャーの中、先発として仕事を果たしたことは大きい。

 開幕5連勝でスタート。4月の月間MVPに選ばれ、ルーキーにしてオールスターにも選ばれた。

 だが、中盤戦以降は苦しみ、気づけば黒星が先行。

 「精神的に、プロの世界は大変だと思った。ずっと勝てるわけじゃないけど、色んなことを、色んな方面から言われる。いかに、自分を持つことが大切かと思いました」。

 初勝利でお立ち台に立った際「僕は僕です」というセリフで球場を沸かせた。チーム内でもそのセリフでいじられる様になった。マスクをかぶった阿部からは「天然」と言われたように、報道陣の取材対応でも、記者の質問の意図が理解できずに、沈黙や独特の空気がその場に広がることも。「不思議な選手だな」というのが、私が最初に抱いた感想だった。

 勝てば勝つほど注目度が増す。当然のことだ。巨人であれば、他球団に比べても記者の数が多いし、毎日のように誰かしらに声をかけられる。5連勝したら、初黒星、その後の敗戦の話題も大きくなる。高木勇自身、多方面からぶつけられる質問に、対処しきれなかったように思う。

 それでも1年間ローテーションを守り続けてきた。ヤンキースで活躍中の田中将大は楽天時代、毎年のように目標を聞かれると「1年間ローテーションを守ること」と答えた。コンディション管理、調整は当然のこと、日々のストレスにも耐えながら、精神的にも充実させてないといけない。それを1年間保つのは、想像以上に大変なことの様だ。

 9月の中旬くらいに、高木勇と何気ない雑談をジャイアンツ球場でする機会があった。その時、私の服装のほころびを見つけると「今はGU(ジーユー)に行けば、1900円で何でも買えますよ。服も靴も」とアドバイスをくれた。すると横にいた関係者が「契約更改終わって、同じセリフが言えてるかな?」とニヤリ。でも何となく、高木勇はそのままの気がする。そう思った。「僕は僕です」というあの言葉が、頭の中に浮かんだ。

 10月はCSもある。もう少し、高木勇の戦いは続きそうだ。「僕よりいっぱいいい投手がいるのに、投げさせてもらえている。感謝しています」。自分らしさを最後まで貫き、2015年を駆け抜けてもらいたい。

(デイリースポーツ・橋本雄一)

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