若者を中心としたラジオ需要増加のワケ

ラジオで卒業を発表したSKE松井玲奈
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 インターネット社会が加速度的に進む昨今、意外にも「ラジオ」が再び脚光を集めている。これまで「テレビ」は大きな娯楽ツールだったが、ネットが浸透するにつれテレビ視聴者が減少。最近は高視聴率より低視聴率の話題が多い。テレビを見ない、家にないといった層も少なくない。そんな中、なぜ今ラジオなのか。

 6月に発表された首都圏の最新ラジオ平均聴取率(12~69歳対象、ビデオリサーチ調べ)は6・0%。2カ月に1回聴取率調査の結果が出る中、6%に乗った月は2014年の8月以来。その間の月は5%台を推移していた。

 12~19歳の若年層に目を向けてみると、最新の平均聴取率(同月発表)は1・5%。これは14年6月の0・9%という数値から0・6%上がっている。若干しか増えていないとの見方もあるが、1・5%に到達したことは過去2年間で1度もない。同調査は6~24時が対象時間になっているため、若者に人気のある24時以降の時間も含めると、聴取率がさらに上がる可能性もある。徐々にではあるが、若者たちからの人気が高まっていると言える。

 なぜ若者を中心にラジオの需要は高まっているのか。大きな要因の1つとして、スマートフォンやパソコンから簡単に聴くことができるインターネットラジオサービス「radiko(ラジコ).jp」の普及が考えられる。14年4月からは、全国のラジオ局が聴ける有料サービス「radiko.jpプレミアム」も始まっており、ラジオ業界に変革が起きている。ラジオ放送局・ニッポン放送の関係者によると、ラジコを中心に人気が高まるきっかけが見えてきた。

 局内でも、ラジオ需要が高まっていることを実感しているといい、「一概には言えないが、ラジコが浸透して、ウェブニュースやツイッターとの相性がいい。特にオールナイトニッポン(同局の代表的番組)では、ツイッターでハッシュタグ(カテゴリの検索をしやすくするために♯○○○と番組名などを入れるもの)を付けてつぶやきながらオンエアを聴いている人も結構いる。インターネットとは戦うのではなく共存できているかもしれない」と見解を示した。

 SNSなどをきっかけに、普段ラジオを聴かない層もラジコを使い、聴くようになる。こういった今の時代ならではの新規ユーザー獲得方法もあるようだ。

 さらに考えられる要因は、芸能人などパーソナリティーの深い部分を知ることができることだ。ラジオは芸能人の普段見せない“語り場”となる重要なツールともなっている。

 例えば、SMAPの中居正広は20年以上パーソナリティーを務めるニッポン放送「中居正広のSome girl’SMAP」内で実父が亡くなったことや、自身の喉の手術、入院していたことを発表した。

 同局関係者は「中居さんは『テレビはたまたま見ている人もいて、みんながみんな自分のことを好きじゃないかもしれない。でもラジオは自分のことを好きとはいかないまでもいいと思ってくれて、わざわざ聞いてくれている。そういった人たちは大事にしたい』と話してくれている」と話した。

 SKE48の松井玲奈もグループからの卒業を同局「AKB48のオールナイトニッポン」内で発表した。このことについても「ツイッターやブログもあるけれど、松井さんだけでなくAKBさんはオールナイト-を『家』のように大事な場として考えてくれている。ライブや劇場はチケットを買った人だけになってしまう。そういった意味で、聴きたい人がみんな聴けるとこで報告している」(同)。2つの例から、発信する側もラジオを特別な場としていることがうかがえる。

 インターネットとの共存、発信する側と聴く側の需要と供給の合致。この2つはこれからのラジオの進撃を大いに支えていきそうだ。AMラジオ局のFM化も進んでおり、ラジオ業界はさらに拡大していくことが考えられる。好きな有名人やスポーツ中継、故郷の親しみある番組-。お気に入りのラジオ番組が見つかれば、普段の生活の中に何気ない楽しみが増えるかもしれない。(デイリースポーツ・田中哲)

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