“第2のゴーカイ”は現れるか…

 今週の中央競馬で一番の注目レースはもちろん、今年から“本格コース”阪神外回りの芝1600メートルに舞台を移して争われる朝日杯FS(21日)。その一方で、前日の中山ではもうひとつのG1、中山大障害が行われる。

 この一戦はレース後に取材をしていて、検量室周辺は平地G1に負けないくらいの熱気に包まれる。上半期の中山グランドジャンプを含めて年間2つしかない「J・G1」で、障害馬に携わる関係者としては1年を締めくくる大一番。戦い終えたほとんどの騎手が多弁で、なかには興奮気味かつ速射砲のようにコメントを発するケースも見られる。

 平地戦以上に普段の調教からコンタクトを密に取って馬をつくり上げ、人馬の呼吸を合わせることにも腐心し、成果を試す集大成の場。だからこそ気持ちを高揚させるのかもしれない。

 これまで競馬担当記者として接してきたなかで、個人的な“障害最強馬”はゴーカイだ。重賞初Vを飾った99年東京オータムジャンプ以降は、18戦して馬券圏外に敗れたのは2回(4、5着が各1回)だけで、J・G1には6回挑戦して00、01年の中山グランドジャンプを制覇するなど全て連対。中山大障害は99~01年に3回参戦して全て2着惜敗となぜか無縁だったが、最優秀障害馬のタイトルを2度獲得するなど、ジャンプ界の王者として9歳に引退するまで息の長い活躍を演じた。

 「最初は、こんな脚で障害を跳べるのかと不安だったんだ」

 管理していた郷原洋行元調教師が同馬の引退後にこう明かしたように、前肢の左右の爪がアンバランスで、それが遠因となり調教中の骨折で引退を余儀なくされたというから、まともだったらどれだけタイトルを積み重ねたことか。各障害を必要な高さだけ、きれいに飛越するセンスの良さは今でも記憶に残る。少なくとも平成以降の国内障害馬では最強ではなかったか。

 ちなみに、ゴーカイという馬名の由来を郷原さんに教えてもらったことがある。

 「オーナー(吉橋計氏)と青森県に行った時にすし屋で食事をしてね。預かることになった2頭のうち、1頭は(郷原さんの騎手時代のニックネームである)ゴーワンにしよう、もう1頭は馬が賞金を稼いだらワーッと豪快にやるかってことで、ゴーカイと名付けたんだ」

 競馬ファンならご存じの通り、JRAは今年から障害戦に関して2場開催時や主要オープン競走を除き、原則として第3場(いわゆるローカル)での編成を基本とし、また同日に2つの障害レースを行う場合は同一場に番組を編成。“虐げられている感”が否めないが、その是非は別にして、今年の中山大障害は珍しくメーンレース(11R)として行われる。ハラハラドキドキの5分弱のレースを堪能しつつ、“第2のゴーカイ”を予感させるくらいの馬が今後現れることも期待したい。

(デイリースポーツ・野田口 晃)

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