ファンが求めるチャンピオンとは…

 横浜の大橋ジムで井上尚弥や八重樫東の練習を見ていたときのこと。大橋秀行会長が、ふと思いついたような口ぶりで言った。

 「一番価値のあるチャンピオンって何でしょうね。何階級制覇とか、何回防衛とかあるでしょう。ファンが一番求めているのは何だろう」

 目の前でサンドバッグをたたく井上尚はライトフライ級王座を返上して2階級を、王座を失ったばかりの八重樫は3階級制覇を新たな目標として練習に励んでいる。

 かつては大偉業とされた複数階級制覇だが、17階級に分割化された現代では40人以上が3階級制覇を達成している。希少価値ならオスカー・デラホーヤとマニー・パッキャオの6階級制覇がここではさんぜんと輝く。

 WBA世界スーパー・フェザー級王者の内山高志を擁するワタナベジムの渡辺均会長は「(内山は)年末に9度目の防衛戦をして、来年は3試合、再来年には具志堅の記録(14度防衛)を狙う」と計画を明かす。「何階級制覇より、同じ階級で防衛を重ねる方が価値があると思うんです」(同会長)。これも一つの見方だ。

 もう一つ、主要4団体制覇がある。WBCとWBA暫定王座を獲得後、IBF世界ミニマム級王者になった高山勝成が、8月9日にWBO同級王者フランシスコ・ロドリゲス・ジュニア(メキシコ)との統一戦に判定負けして偉業を逃した。

 複数階級、複数回防衛、複数団体制覇-どの道もたやすいものではない。しかし、団体の乱立や暫定、シルバー、統一など王者の粗製への批判が後を絶たない現代、どんな相手とどのように闘ったかが、よりファンの胸を打つのではないか。記録よりも記憶の時代にいるのかもしれない。(デイリースポーツ・津舟哲也)

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