日本のMOM「見えていた」内田が妥当

 0‐0の引き分けに終わったW杯の日本‐ギリシャで、日本からマンオブザマッチを選ぶのだとしたら、迷わずDF内田篤人(シャルケ)の名を挙げる。理由は1つ。試合全体を見る力にたけていた点だ。

 分かりやすい攻撃面では後半24分のシーン。中央の香川からの浮き球のパスをダイレクトで大久保に折り返した。大久保があと1歩早く入れていれば待望の1点を奪えていた。その後も中央の香川から本田がスルー、右サイドで受けた内田がゴロで中央にパスを入れた。相手守備ラインとGKの間に入ったボールを押し込めれば1点だったが、岡崎、香川が入り込めなかった。後半27分には相手選手がボール処理にもたついているところにスライディングで飛び込みシュートを放った。

 これらのプレーは中央で守りを固めたギリシャには非常に効果的だった。クロスはただ上げるのではなく、ゴロで、背の低い日本の攻撃陣でも勝負できるようにしていた。

 守備でも前半に味方がボールを失った場面で、スライディングでカウンター攻撃を未然に防いだ。「ここをやられれば失点」という場面では必ず顔を出し、守備で貢献していた。

 その内田がギリシャMFマニアティスの退場を「いやでしたね」と振り返ったのが興味深かった。「よくあるじゃないですか?相手が10人になって、やることがはっきりして。それが、ギリシャの戦い方なんで」。試合中によぎった予感は的中した。ギリシャが前線に1人は選手を残して勝利を捨てていないことも感じ取り、「みんなが前に前にという時が一番、危ないと思う」と攻守のバランスを常に考慮していた。

 終盤、ザッケローニ監督は「選手にスピードがなかったから」という理由で空中戦に強いDF吉田を前線に上げロングボールで攻めるパワープレーに切り替えた。この戦術変更で内田は攻撃に絡まなくなった。ギリシャを脅かした右からの崩しは見られなくなった。

 コートジボワール戦で出すことすらできなかった、パスをつなぎ、守備も前線から素早くプレスをかける日本のサッカーを見せることはできた。もちろん、世界に届かないレベルだったことは1人少ない相手を崩しきれなかった結果が物語っている。

 だが、もう少しの時間、ザッケローニ監督は選手を信じてあげられなかったのかとも思う。ゴールにかかっていた手を日本が自分から離してしまったのは残念でならない。(デイリースポーツ・広川継)

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