ホープ遠藤が苦戦した理由とは
大相撲の春場所(大阪市・ボディメーカーコロシアム)で、ホープの呼び声高い遠藤(23)=追手風部屋=が苦戦している。初場所で11勝し、今場所は番付を自己最高の東前頭筆頭まで上げた。横綱、大関を初め上位陣全員と当たる位置で、ミラクル快進撃が期待されたが、フタを開けて見れば、格の違いに戸惑うばかり。ホープが勝てない理由とは‐。
注目の初日は綱とりがかかる大関鶴竜に挑戦した。恐怖心をものともせず、左顔面から当たり、直後に鮮血が飛び散る。瞬時に右へ動いての突き。大関を土俵際に追い詰め、あとひと突きで殊勲星をつかむところだったが、勝利を焦ったのか、足がついていかず、逆転のはたき込みをまともに食らった。
2日目の相手は日馬富士。初の横綱挑戦、初の結び。その重圧もあったのか、立ち合い踏み込まれると、強烈な突きを浴び、タイミングのいいすくい投げで裏返しにされた。3日目も連日の横綱戦。角界の頂点に君臨する白鵬の胸を借りたが、子供扱いされて、完敗した。4日目の琴奨菊戦も大関の怒涛の寄りから最後は土俵下へ押し出された。秒殺された先場所に続く2度目の対戦もいいところなく終わってしまった。5日目の稀勢の里戦でようやく大関戦初勝利。今後の飛躍に期待を抱かせた。
場所前の遠藤はこう評価されていた。体が柔らかく、腰が据わっていて、抜群の身体バランスを持っている。また、研究熱心で相手の取り口を分析してから土俵に上がる。さらに相撲センスがよく、相手の攻めに対する対応能力が高い。それが鶴竜戦を除く、上位戦では通用しない。
本紙評論家の武蔵川親方(元横綱武蔵丸)は遠藤の戦いぶりを見てこう苦言を呈す。「遠藤は立ち合いが悪い。最初からそうだったが、体が高くてふわふわした感じ。足も全然前に出ていない。これでは相手に圧力をかけられないし、本来丸くなるべき背中がまっすぐになっているから、相手の体重がまともにかかってくる。当然、当たりは弱くなる。その上、頭で当たらず、あごを上げて顔で当たっているから、相手の頭が下に入る。こうなったらもう相手のやりたい放題になってしまう」
遠藤は初日の鶴竜戦で左顔面から流血。頭で強く当たったように見えたが、武蔵川親方は違うという。
「あれは頭ではなく顔から。流血したと言ってもかすり傷ですよ。しっかり歩けてたから心配いらない」
そしてこう対策を授ける。
「まずは頭で低く当たること。今のままでは当たりが高すぎる。そして仕切り線を越えて、相手側に踏み込んでいかなくてはいけない。遠藤は学生時代の癖なのか、上位相手でも立ち合いで受ける。横綱や大関に先に立たれて踏み込まれたら、勝てるわけがないですよ」
遠藤は基本の基本に戻り、立ち合いで素早く低く当たって相手陣内で戦う。そうすれば持ち味である相撲センス、柔らかい体、重い腰が生きてくるというわけだ。5日目に挙げた稀勢の里戦勝利をきっかけに、中盤戦以降の苦境脱出に期待したい。
(デイリースポーツ・松本一之)
