デザイナー、イチローの実兄 鈴木一泰さん

 スポーツアパレルのブランドプロデュースや、企業のロゴデザイン、テーピング(キネシオテープ)開発まで幅広く活躍するデザイナーがいる。鈴木一泰さん(44)、ヤンキース・イチロー外野手の実兄だ。今秋から、バスケットボールの国内トップリーグNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)に参入する「兵庫ストークス」の公式キャラクターを制作し、チームのブランドコンサルティングも請け負う。鈴木さんのデザイナー業へのこだわりを聞いた。

  ◇   ◇

 ‐鈴木さんデザインの公式キャラクターに150通もの応募の中から「ビクトリくん」という名前が付けられました。生みの親として、どんな気持ちですか。

 「率直にうれしいですね。そこまで応募があるとは思ってなかったですし、ここまで愛されてるとは思わなかったですから。基本的に自分が制作したキャラクターには自分でネーミングするので、ファンの方に付けてもらうのは初めて。今までとは違ったキャラクターになりますね」

 ‐どんな存在になってほしいですか。

 「チームとファンの懸け橋になってくれればいいですね。着ぐるみもできるそうなので楽しみです。キャラクターとスポーツは切り離せないですからね」

 ‐ストークスの本拠地は兵庫県。弟のイチロー選手は兵庫・神戸が本拠地だったオリックスで育ちました。兄弟そろって、同地域のトップスポーツにかかわっています。

 「彼をきっかけに、縁ができたのかなあ。チームのキャラクターを描くことも、関西方面に自分がかかわるチームができることも予想もしてなかったです」

 ‐かつてイチロー選手の試合観戦で足を運んだ地ですね。

 「会社を辞める前ですかね、よく週末に試合を見に行ってました。3月にストークスのキャラクターのお披露目があったのですが、会場(神戸グリーンアリーナ)が球場(現スカイマーク)の近くで懐かしかったです」

 ‐ストークスとはブランドコンサルティング契約を結んでいます。ほかにどんなことをやっていくのですか。

 「今後はユニホームのデザインにもかかわることになると思います。ユニホームはやってて楽しいんですよ」

 (すでに野球の関西独立リーグ、元近鉄の村上隆行氏が監督を務める、06BULLS=東大阪市=のキャラクターデザインとユニホームを手掛けている)

 「去年の3月に縁があってBULLSの仕事が決まり、新ユニホームを作ったんですが、最初のシーズンで優勝したのでうれしかったですね。ストークスも(契約後に)JBL2(日本リーグ2部)で優勝して、今季はNBLに昇格が決まって!こういうのは本当にうれしい」

 ‐バスケット、野球以外も手掛けたいのでは。

 「今、やっているところに迷惑がかからないのであればやりたいです。次はサッカーですかね」

 ‐スポーツアパレルのブランドもプロデュースしているそうですね。

 「SUW(スゥー)という会社を97年にアメリカで立ち上げました。スポーツウエアだけど、カジュアル志向っていうか、街で着られるスポーツウエアというコンセプトです」

 ◆同ブランドから発売中のテーピング「コブラクションテープ」は、斬新なデザインと機能性が評判になっている。

 ‐波形の形状とカラフルなところが既存の品物との大きな違いですが、発想はどんなところにあったのですか。

 「目立とうと思ったら、同じモノを作ってちゃダメ。貼ったときにスタイリッシュでカワイイことにも重点をおいて考えたら、結果、機能性もアップしました。建築の仕事をしていたのも役立ったのかもしれないですね」

 ‐さまざまなジャンルのアスリートたちが使用しているようですね。

 「ヤングなでしこやプロ野球選手も使ってくれています。ある球団の主力選手が足に貼っている写真をスポーツ新聞で見て、うれしかったですね。フィギュアスケートやビーチバレーのトップアスリートの方も使ってくれていて、この間『あの波型がすごくいいです』というメールをもらいました」

 ◆ユニホームデザイン、キャラクター制作以外にも企業のロゴ制作、さらに動物をモチーフにした絵本も執筆中。テレビにも出演して積極的に情報発信するなど活動は多岐にわたる。だが、デザインの道に進むまでには建設会社でサラリーマン生活を送った。

 ‐当時はどんな仕事をしていたのですか。

 「アパートやマンションの設計です。図面を引いていました」

 ‐安定した生活から、デザインの道を選んだ理由は何でしょう。

 「サラリーマン生活は充実してましたけど、昔からやってみたかったんです。もともと絵を描くのが好きでしたから。仕事を辞めて東京や大阪に行って、いろんな出会いがあって、それが今につながっています」

 ‐父親の宣之さんは脱サラして会社経営、弟はプロ野球選手。自分の腕で勝負するのは鈴木家の家風でしょうか。

 「たまたまじゃないですか。ただ、父からは、得意なものを伸ばしていけ、というような教育はあったと思います」

 ‐ちなみに、野球の経験はあるのですか。

 「遊び程度ではやってましたよ。それなりにはやってました。でも、飽きちゃうんですよ。ずっと、続けられるのが描くこと、デザインだった。子供のころはマンガをよく描いていましたね。完成したときの感動っていうのが、当時からありました」

 ‐イチロー選手も活躍を喜んでいるのでは。

 「最近、連絡を取ってないんですよ。(ヤンキース移籍で)ニューヨークに行って、いろんな体験をしてるし、大変だと思いますから、ケガなくやってくれれば。世界でNo.1のチーム、勝って当たり前のチームに行ったわけですから、シアトル(マリナーズ時代)にいたときのような感覚ではいられないでしょうし」

 ‐有名な弟を持つ苦労もあるのでは。

 「あまり感じたことはないです。弟のおかげで、出会えない人と出会えたりもしているわけですし、感謝もしてますよ。そういうもの(イチロー目当て)だけで来る人もいるけど、僕自身が惑わされないでしっかり自分を持っていればいいことですから」

 ‐分野は違っても、兄弟そろって“アーティスト”なのでは。

 「そう言っていただけると、うれしいですけど、ボクはまだまだ極めてないし、これからです。(弟を)追い越せるか、わかりませんが、負けないようにしないとね。自分の作品を判断してもらうのに、弟は全く関係ないので、世間の人たちに、どう評価してもらえるか。世界で通用するものが出せればうれしい。それがキャラクターデザインの世界なのか、テーピングなのか、模索しているところです」

 (続けて)

 「デザイナーって職業は、日本ではあまりリスペクトされてない。地位を上げたいという思いがあります。もっともっと評価されていいと思うんですけど、日本ではクリエーティブ系の人たちの評価が低い。本来は日本の人の目は肥えてる。日本で成功したら、世界で評価されるようにならないと。作品は評価されなければ、自分だけのものになっちゃうし、できるだけ発信して人の目に触れるようにしたいと思っています」

 鈴木一泰(すずき・かずやす)1968年11月3日、神奈川県出身。愛知県育ちで、愛知工業高校の建築科を卒業後、中央工学校の建築設計科で学び、工務店を経て建設会社へ。退社後、デザイナーに転身。企業のトレードマークやロゴデザイン、キャラクターデザインなどを手がける。現在はオリジナルキャラクター「プリンスハビロー」の絵本を製作中。主な作品に、ドワンゴの携帯キャラクター「インコちゃん」、日本BS放送(BS11)のイメージキャラクター「BEAMO」などがある。

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