【10】学生へ「オンリーワン」の人間に
「室田淳の鉄人トーク・第10回」
昨年4月から母校の日体大で客員教授を務めさせてもらっているわけだけど、東京五輪での日本代表ゴルファー輩出という大きな目標のほかに、もう一つ、僕には大切な役目があると思っている。
というのは、これはうちの大学に限った話ではないんだけども、多くのプロゴルファーが経歴に○○大出身としながら、実は卒業できずに中退しているケースが多いんだ。
うちの大学もそのことを危惧していて、やはり大学に入学した以上はきちんと卒業した上で、次の舞台に進んでもらいたいと思っている。僕は卒業しているし、教員免許も持っているので、そういう意味でも、いいお手本になるというか、学生たちがスポーツだけでなく、勉学にもしっかりと励んで卒業していく環境づくりのお手伝いができればと思う。
今年も試合のスケジュールが詰まっているので、なかなか時間が取れないかもしれないけど、ゴルフ部の指導だけでなく、教壇にも立って学生たちに自分の経験を基に講義できればと考えている。
学生たちに伝えたいことは、すごく月並みなんだけど、長く努力を続けていれば、いつか必ず光が差す時がくるということ。僕みたいな凡人でも、ゴルフの世界でそれなりに結果を残すことができたのは、常に目標を持って、あきらめずに地道にやり続けてきたからだと思う。
といっても、決してトップになれと言ってるんじゃない。ゴルフの世界でいえば、全員がジャンボ尾崎になれるわけじゃないんだから。それよりも「オンリーワン」の人間を目指してほしい。優勝だけが勲章ではない。自分がある年齢になって過去を振り返った時に多少なりとも光るものがあったなと思える人生を送ってほしい。
うちの大学は学校の教員やスポーツの指導者を育てていく大学でもあるから、学生たちには人間的にもしっかりとしたもの身につけて卒業してもらいたいんだ。僕の経験が彼らに少しでも参考になればうれしいね。
(協力 ザ・リッツ・カールトン大阪)
◆室田 淳(むろた・きよし)1955年7月26日、群馬県出身。太田高を経て日体大に進み、19歳からゴルフを始める。27歳でプロテストに合格し、91年のブリヂストン阿蘇オープンで初優勝。ツアー通算6勝。昨季は日本オープンで6位に入るなどし、史上最年長59歳にして賞金シードに返り咲いた。シニアツアーでも通算12勝を挙げ、06、07、13年と3度賞金王に輝く。家族は妻と3女。180センチ、80キロ。サメジマコーポレーション所属。