高知・松本 支えは兄の応援“有終2冠”に輝き野球に後悔なし
【高知・松本英明投手】
投手の勝ち星は、野手が打ち、守ってくれるから転がり込んでくるものだと考えている。
「タイトルを獲ったっていうより、獲らせてもらったっていう気持ちの方が大きいですね」
松本英明はそう話す。9勝を挙げ、初の最多勝、ベストナインの2冠に輝いた。
最初の3年間は、契約選手と練習生の間を行ったり来たりの日々だった。なかなか試合で投げさせてもらえない。チャンスをもらっても、結果が残せない。
「毎日のように悔し涙流しながら、市営球場から独りで帰ったり……。3年間はもう、地獄を見てるような感じでした」
オレのほうが練習している。ボールの良さも認めてもらっている。なのに、なんであいつが契約できて、オレが練習生やねん!そんな悔しさが常にあった。
支えとなったのは、兄・伸明の応援である。「お前は絶対プロに行けるから。できるところまでやれ!」。兄も高校時代、プロから注目されるほどの投手だった。
転機は4年目、副主将兼投手キャプテンに指名されたことだ。26歳になるが、これまで何も残せていない。結果を出すために、自分でなんとかするしかない。練習態度はもちろん、成績でも引っ張っていきたい。このままじゃ、あかん--。
「自分には責任感がなかった。『こういうことを考えながらやるべきやったんやな』と。あれがなかったら多分、去年、今年と成績は残せていないと思います」
NPBへの望みは10月のフェニックス・リーグまで捨てていなかった。だが、タイトルを獲って指名がないのなら、諦めも付く。
兄が「ここまで1つのことに打ち込んだお前を誇りに思う。自慢の弟や」と言ってくれた。最後にいい思いができたのは、あの辛い3年間があったからこそだ。
「自分は、やってきたから胸を張って『ここまで這(は)い上がったんや』って言えます。辛かったことのほうが多かったですけど、こうやってタイトルも獲れた。僕の野球人生のなかでも多分、一生忘れないですね。この5年間は」
やり切った。野球への後悔はもう、残っていない。