徳島・東 守備力でこじ開けたNPBの扉
【徳島・東 弘明内野手】
自分に指名の意志を表してくれていた球団が、早々に「選択終了」を宣言してしまった。ドラフト会議が終わり、しばしの休憩時間を置いて育成枠ドラフト会議が始まる。指名順はオリックスからである。
「もうないのかな?」と思っていたそのとき、中継画面に映るモニターに「東弘明」の名前が大きく映し出された。
いまから4年前の2009年11月28日、大阪・茨木市で行われた合同トライアウトで徳島・森山一人コーチが口にした一言を覚えている。
「井端(中日)がいますよ」
そう言って指し示したショートのポジションには、濃紺のストッキングが目立つ、線の細い高校生が立っていた。あのころ、まさかNPBに自分の手が届くなどとはこれっぽっちも思っていなかった。
「いやもう全然。アイランドリーグに入れるとも思ってなかったんで」
出場した試合はリーグ公式戦だけでも275試合を数える。4年間、アイランドリーガーとして積み重ねた経験がNPBへの扉をこじ開けた。
だが、指名されて喜んでいられるのはほんの一瞬でしかない。ただでさえ厳しい育成枠からのスタートだ。すでに喜びよりもプレッシャーの方が大きくなっている。
「やっぱ、守備で確実性を増していかんと。守備では全球団、誰にも負けんぐらいの勢いでやらんとダメかなと」
指名後、森山コーチから掛けられた言葉も同じである。
「レギュラーとかどうでもいい。まだ早いから。『僕は守備では誰にも負けません!』ってところを見せろ」
指名の瞬間から携帯電話は着信し続けた。母・悦子さんからの言葉が胸に残っている。
「ここが通過点やと思って調子に乗らず、謙虚に」
勝負は1月、新人合同キャンプから始まる。