14年12月26日10時11分から始まった歴史的偉業へのカウントダウン

 「広島7-0阪神」(23日、マツダスタジアム)

 広島の黒田博樹投手(41)が阪神17回戦で日米通算200勝を達成した。王手をかけて3度目の登板で7回5安打無失点。115球の熱投で白星を手にした。日米通算では野茂英雄に次いで日本選手2人目の偉業。

 2015年2月16日。復帰会見に臨んだ黒田は、ある人に感謝の思いを口にした。冗談を交えながら「一番大きな要因だった」と。

 「今年、断ってしまうと、二度と口を利いてくれないんじゃないかと。ずっと声を掛け続けてくれたので」

 14年12月26日、10時11分。鈴木本部長の携帯電話が鳴った。着信画面には「黒田アメリカ携帯」。祈るような思いで通話ボタンを押した。「帰りますよ」。頭は真っ白だ。「帰る」。言葉の真意が分からない。まだ自宅のあるロスか、広島か…。すぐに聞き返した。

 「どこに?」

 「カープですよ」

 「最後のチャンス」と腹をくくった復帰交渉。日本をたつ前日25日、半ば強引に「気持ちが固まったらこれにサインしてくれ」と統一契約書を渡していた。翌日の着信だった。

 「実は」ヤンキースに移籍する前の11年オフ。電撃復帰の話は進んでいた。だが結果的に、年が明けてヤンキース移籍が決定。一度は諦めかけたが、黒田復帰にこだわる理由があった。「暗黒時代の中心。新井と2人、一番成績がいい時に、悪い方の条件をのんでくれた」。若いチームの中で、精神的な支柱になると確信があった。

 「実は」復帰を決めた年、鈴木本部長に仰天の申し出があった。「1カ月契約はできないんですか?」-。「本気だったと思う。満足な動きができなかったら、チームに迷惑ならスパッと辞めます、と」。海を渡る前、交渉の席では「マイナスインセンティブ」を提案されたこともある。

 「結果は同じでも過程が違う。お金じゃなく思いだったり、投手としてのプライド。裏返せばやろうという意志の強さと、できるという強い自負がある」

 2つの「実は」にある自信と潔さ。黒田を支える強さが垣間見える。20億を超えるといわれたオファーを蹴って、カープ復帰を選んだ。12月26日、10時11分。鈴木本部長は着信履歴を残すために、まだ新しい携帯電話を機種変更した。あの日から始まった歴史的偉業へのカウントダウン。だが、2人にとっては通過点にすぎない。夢は秋の悲願へと続く。ゆっくり、確実に。

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