広島・九里 投げたい一心で食べた大学時代 白米の“チョモランマ盛り”1年間で体重68→89キロ

 広島の九里亜蓮投手(32)がデイリースポーツ読者に本音をさらけ出す一人語り『Spirit of Challenge』がスタート。今年プロ11年目にして、自身初めてとなる開幕投手も務めたタフネス右腕。第1回は『原点』をテーマに、プロ野球選手になるまでの紆余(うよ)曲折の道のりを振り返ってもらった。以下、後編。

  ◇  ◇

 高校は岡山理大付に進学しましたが、それも豊島さんの勧めです。「全寮制の厳しいところにおまえは入って野球を続けなさい」と言われて行きました。寮生活は全然苦じゃなかったですが、練習はきつかったですね。学校に行くのも山を一つ越えて、学校が終わって、山一つ越えて、寮に戻って、反対の山を越えて球場でした。行き帰りがつらいです。坂道をランニングでずっと上っていくので、そのおかげで心身ともに強くなれたのかなと思います。

 正直、やめたいと思ったことも何回かありました。やめたいという電話を親にしたこともあります。その時に「やめたいならやめれば?」とお父さんにも言われたりして、逆に「これでやめたら、ただ逃げているだけだな」と思って。そう言われた方が僕も悔しくて、やめられなかったというのはありましたね。

 メンバーとしてベンチに入らせてもらったのは2年春からです。3年生の時は一応背番号1番をもらいましたけど、僕はあまり投げてないです。1学年下にカープでも一緒だった薮田(和樹)がいて、薮田が基本的にはずっと投げていました。最終的に甲子園に出られなかったですけど、精神的にも強くなれた3年間だったんじゃないかなと思います。

 大学は亜大に進みました。入って初めてブルペンに入った時に周りがみんな球が速すぎて、「本当に自分はここでできるのかな」っていうのを感じたのが1番最初です。そこから生田監督に「とりあえず体重を増やさないと、おまえは試合に投げさせないから」と言われて、1年間で体重を68キロから89キロに増やしました。

 20キロ増量するには食べて吐いての繰り返しですね。吐いて、またすぐに食べ物を入れるんです。それで胃袋をどんどん大きくしていく感じで太りました。朝一からチョモランマみたいに、どんぶりに白米を盛ってもらって、練習の合間にも大きいおにぎりを5個くらい食べて、夜ご飯は朝のチョモランマ盛りを2杯食べるっていう…。

 そのおかげで下半身の安定感は増してコントロールのブレは少なくなりました。ただ、めっちゃ長距離走は遅くなりましたけど(笑)。走りながら太るのはキツかったですが、太って試合に投げたいという思い一心で必死に食べました。

 それからは本当に試合にも投げさせていただいて。2年の秋から1学年上の東浜さん(現ソフトバンク)と一緒に先発として投げさせていただいて、リーグ5連覇して、最後の最後には神宮大会でも優勝できたので、本当に濃い4年間だったと思います。

 僕は小学生の時からプロに行くと言ってました。バカにされてましたけど、ずっとそこは目指してやって、プロ野球選手になることができました。そして今、夢をかなえるために努力している人に対して僕が何か言えるとしたら、やっぱり自分の夢に対して自分で誇りを持つこと。その上で人にバカにされようが、何を言われようが、諦めずに、その夢をかなえるために突き進めば、その夢はかなうんじゃないかなと僕は思っています。

 ◇九里 亜蓮(くり あれん)1991年9月1日生まれ、32歳。鳥取県出身。右投げ右打ち。投手。188センチ、97キロ。岡山理大付、亜大を経て2013年度ドラフト2位で広島入団。プロ初登板初先発は新人だった14年3月29日・中日戦で初勝利。21年に13勝で最多勝。

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