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小沢大仁 座右の銘は“現状維持は衰退”苦しみを糧にひたむきに上を目指す21歳

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 先週から始まった中京開催は、9月29日(8週17日間)までのロングラン。愛知県瀬戸市出身の小沢大仁(21)=栗東・フリー=にとっては、この地が原点だ。

 競馬と出会ったのは小学3年生。家族で中京競馬場に訪れた。「迫力、気迫、歓声を浴びる姿に感動しました。かっこいいな、人馬一体で走りたいな、って。その日に“騎手になりたい”と思いました」。水泳でオリンピックに行きたい、料理人もいいし、パイロットも…。多くの夢と憧れを抱いていた小沢少年の心が一気に動いた。

 競馬とは縁のない家庭で育った。努力を重ねて騎手になる夢をかなえると、華々しいデビューを飾る。JRA史上47人目の初騎乗初勝利。さらにデビュー日に2勝を挙げたのは史上4人目の快挙だ。「松永(昌博)先生のバックアップのおかげで、1年目から勝ち負けする馬にたくさん乗せてもらいました。技術は未熟だったのですが、周りに恵まれて感謝しかない」。31勝を挙げて、JRA賞最多勝利新人騎手に選出された。

 ただ、2年目は26勝、3年目の昨年は13勝と成績が下降。「(負担重量の)減量が減るにつれて乗り鞍が減りました。特に1キロになってから足踏みした。去年は向正面から追い通しの馬ばかりで…」。現実を突きつけられ、悩み、苦しんだ。「危機感があった。うまく乗っても、勝てなければ評価されない。どうやったら勝てるのか-。レースの組み立て方、ゲートの駐立など一から考えるようになりました」。

 今年2月末には所属していた松永昌博厩舎が定年により解散。フリーとなった。これも転機と捉えた小沢は、トップジョッキーとして活躍したのち3月に厩舎を開業した福永師に相談する。「バランス、扶助操作、ゲートの立たせ方。考えきれていない部分が多くあった。馬乗りは感覚のスポーツですが、ユーイチさんは言語化して伝えてくれて理解しやすい。いい感覚をつかめています」と目を輝かせる。

 永島まなみや永野猛蔵がJRA100勝を達成するなど、同期の活躍が目覚ましいが「同期も後輩も重賞を勝っていますし、負けられない。でも、やるべきことは決まっているので焦っても仕方がない。厩舎との信頼関係を築くこと。人気のない馬でも内容あるレースを。少しでも上の着順に。技術を磨いて勝たないといけない。うまくなりたい。その一心です」。パワー強化を求めてトレーニングでウエートを増やし、「デビュー時より10キロほど増えています。動かせる感覚が全然変わっている」と手応えをつかむ。

 JRA全10場の中で23勝と最も勝ち鞍が多いのが中京だ。今週のCBC賞はショウナンハクラクとのコンビで挑む。「前走は開幕週で前が残りやすい馬場のなか、いい末脚。中京は最後に坂があって、小倉よりも前が止まりやすい。十分にチャンスがある。地元の力ですかね。中京とはいい縁があるなと思います。結果を出したい」と重賞初制覇に意気込む。

 座右の銘は『現状維持は衰退』。今年は既に昨年を上回る17勝を挙げる小沢だが「落ちるのは一瞬。満足するとそこで終わりですから」と口元を強く結ぶ。底を味わった苦しみは忘れない。ひたむきに上を目指す姿を応援したい。(デイリースポーツ・井上達也)

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