五能線「リゾートしらかみ」3編成に出会う絶景の旅 バスケの街からぶな林の中にある神秘的な池

 秋田と青森の県境を縫うように走る五能線は、ただのローカル線ではない。リゾート列車の先駆けである快速「リゾートしらかみ」が、1日3往復運行している。その「リゾートしらかみ」に乗り継ぎながら、沿線の魅力を満喫してきた。

 秋田駅10時50分発の「リゾートしらかみ」くまげら号に乗車。列車は奥羽本線を経由して東能代駅まで走り、ここで進行方向が変わるため、座席を回転させて五能線へと入っていった。

 五能線は東能代駅と青森県の川部駅を結ぶ全長147・2キロのローカル線。日本海の青と、世界自然遺産・白神山地の緑が鮮やかに交差する風景が特徴だ。

 東能代駅を出て4分で能代駅に到着。能代は日本人初のNBAプレーヤー・田臥勇太(現宇都宮ブレックス)が高校時代を過ごした地である。彼の母校・能代工(現・能代科学技術)は、人気漫画『スラムダンク』のモデルの一つともされ、「バスケの街」として知られている。

 ホームにはバスケットゴールが設置されており、7分間の停車中にフリースロー体験ができる。観光協会が主催するこのイベントでシュートを決めると、秋田杉で作られた木製コースターがプレゼントされる。筆者も見事成功し、記念のコースターを手に入れた。

 列車は能代駅を出発し、白神山地と日本海を眺めながらあきた白神駅、岩館駅を経て十二湖駅へ。このツアーではここで一度途中下車をする。

 送迎バスで「アオーネ白神十二湖」に到着すると、ベテランガイドの案内でトレッキングへ。白神山地のふもとには大小33の湖沼群があり、ブナ林の中を歩いていくと、この地域で最も有名な「青池」にたどり着いた。透明度の高い神秘的な水面は、汗だくで歩いた疲れを癒やしてくれた。

 散策後は再び十二湖駅に戻り、15時57分発の「リゾートしらかみ」橅(ぶな)号に乗車し北上を続ける。くまげら号は国鉄時代のキハ48を改造した列車だったが、橅号は最新のハイブリッド車両だ。

 列車は深浦駅に到着。ここでは上りの「リゾートしらかみ」青池号と列車交換のため18分停車する。駅舎を出て静かな町並みを眺めていると、青池号がホームに滑り込んできた。運転士交代の様子を見ながら、ホームを挟んで並んだ2編成を写真に収めることができ、これで五能線を走る3種類のデザインの列車をすべて目にすることができた。

 青池号が出発して3分後、橅号も深浦駅を出発。しばらくすると列車は減速し、断崖絶壁が続く景観を楽しませてくれる。観光列車ならではの演出だ。

 先頭の展望席に座ると、線路沿い生い茂る草木をかき分けるように進む光景は迫力満点だ。そうこうするうちに列車は千畳敷駅に到着し、ここで15分停車。駅を出て国道101号を渡ると、奇岩や隆起した岩浜を歩くことができる。出発3分前には汽笛が鳴らされ、乗り遅れを防いでくれる。

 約30分後、この日の目的地である鰺ケ沢駅に到着。橅号に別れを告げ、送迎バスで宿泊先のホテルグランメール山海荘へ向かった。海側の部屋からは日本海が一望でき、山側にはそびえ立つ岩木山が望める。温泉では塩分濃度の高い「化石海水」の湯やサウナで、旅の疲れを癒やした。

 夕食はビュッフェ形式で、地元の山海の幸をふんだんに使った料理と、地酒、りんごジュースなど青森ならではのドリンクを楽しんだ。この日は食後にラウンジで三味線民謡ショーが開催され、宿泊者の飛び入り参加もあり大いに盛り上がった。

 ツアー初日は、普通乗車券や青春18きっぷに指定席券を購入すれば乗車できる快速列車「リゾートしらかみ」に乗って楽しい一日を過ごした。同行者のJR東日本秋田支社社員は「五能線は来年90周年を迎えますが、われわれは列車に乗ってもらうだけでなく、沿線の秋田、青森の観光も楽しんでもらえればと思っています」と話していた。ボックス席もあり家族や仲間とのんびり旅をするのもいいだろう。

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