ともに「怖さ」を消す戦い

 08年5月7日、3回に頭部に死球を受ける金本。投手木佐貫
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 【7月8日】

 西舘勇陽の直球が大山悠輔の顔付近を襲った。二回先頭である。このとき巨人、阪神のベンチに何がよぎったか。西舘の前回登板だと思う。この1球が両軍に及ぼす影響は…。

 そんな視点でゲームを追った。

 西舘は7月1日のヤクルト戦でルーキー松下歩叶への頭部死球で危険球退場になった。投じたのは142キロの直球。松下は打席で倒れ込み、そのまま担架で病院に搬送されたと聞いた。

 「松下選手に何もなければ…。すごく申し訳ないです」。西舘はそう語っていたそうだが、この夜はそれ以来のマウンド。本音を隠さず書けば「がんばれ西舘」の思いもあった。もちろん松下の健康を一番に案じながら。

 というのも、「与頭部死球」の後に深刻なイップスを発症する投手を何人か見てきたからだ。

 思い出すのは、ここ東京ドームの伝統の一戦で金本知憲が木佐貫洋から頭部死球を被った08年のエピソードだ。

 あのときヘルメットが破損するほどのダメージで、木佐貫は危険球退場になった。が、金本はその後も出場を続行…しかも、直後の打席で本塁打を放つ離れ業をやってのけた。試合後、ドームの記者席で鉄人の1面記事を執筆していると、なんと、精密検査を受けているはずの本人から電話があった。

 「木佐貫はわざとぶつけたわけじゃないし、オレは大丈夫。まったく何ともないから…。このコメントを他の記者にも回してもらえないか」

 ゲームセットとともにトレーナーに付き添われ、タクシーで都内の病院へ直行したので確かにコメントは無かった。こちらは情景だけで十分「鉄人物語」を書けたのだが、アニキがわざわざ木佐貫への気遣いを巡らせたのは、過去につらい思い出があったからだ。

 主砲を長く担っていると、内角攻めも数え切れなければ、死球も避けられない。そんな中、交流戦で金本の頭部にぶつけたパ・リーグ投手がその後イップスを発症し、長らく1軍復帰できずにいた。その話を耳にした金本は自らのカラダ以上に投手のココロを案じるようになった。

 頭部死球のショックでメンタルがやられ、指先が狂う。制球がままならなくなる投手も少なからずいるのだ。

 さて、西舘はどうだったか。巨人の投手コーチ内海哲也が心配そうに見つめる中、やはり、岸田行倫の「右打者への配球」は外中心に映った。それでも、一週間前のフラッシュバックが深刻に至ることはなかったように思う。

 翻って、打者心理はやはり「怖さ」がないといえば噓だと思う。くだんの事情を踏まえれば、阪神の右打者はインサイドを消して待ったか。少なくともこのゲームでは内側の厳しいところへはこない。プロとしてそんな想定があるはずだし、また当事者が「その通り」と言わないまでも、1打席目で西舘の初球、真ん中の直球に踏み込んで左翼最上段へ運んだ森下翔太、そして、頭部への残像を消して追加点の適時打を放った大山は見事だった。次回また、ストレスを拭った西舘との再戦を楽しみに待ちたい。=敬称略=

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