【９月２３日】

　４－６－３…。スコアブックにそう記しかけてペンをとめた。阪神二回の攻撃である。無死一塁で木浪聖也の打球が二遊間へ転がると、これがセカンド林琢真のミスを誘った。

　林は二塁ベースカバーのショート石上泰輝にトスしたが、呼吸が合わなかった。それた送球が転々とする間に一塁走者の大山悠輔が三進。願ってもない無死一、三塁の先制機が広がった。

　公式記録は林のＥだが、トスの行方を見れば「悪」送球ともいえない。一塁寄りのトスでゲッツーを狙った林とアウト一つで構わないと思ったショート石上。ただただ、そんなふうに見えた。以前ここで書いたが、三浦大輔は二遊間の人選に苦しんできた。故障者の影響もあってコンビネーションが定まらない…ＤｅＮＡの弱みといえる。

　相手先発は才木浩人と防御率のタイトルを争うＡ・ケイだ。ＣＳファイナルステージでぶつかりそうな難敵だけど、攻略の糸口は見えてきた。弱みを突けば脆くなる。彼の弱みはイライラの虫。どうすれば頭に血が上るのか。一つは味方の拙守。一つは球審のジャッジ。そんなふうにゲームを眺めていたら序盤から相手にミスが出た。

　さっそく来た。前述の二回だ。転がせば１点。絶好機で高寺望夢の泥くさい打撃を期待したが、やっぱり難敵は難敵。仕事をさせてもらえなかった。

　「弱み」といえば、今だから書ける懐かしい話を思い出す。あれも関東遠征のラストゲーム…確か、０８年の秋だったと思う。試合後、赤星憲広と２人で都内へ食事に出かけたのだけど、驚いたのは負けん気の鬼だった彼からこんな話を聞いたことだ。

　「僕、短い送球が嫌なんですよ。学生時代からずっと。それを知る相手は僕の弱みを突いた走塁をしますから」

　プロ野球で生きるにはいかに敵陣から嫌がられるか。散々嫌がられる足を見せてきたレッドにも弱みはあった。　さてこの日、ケイは阪神打線を嫌がってくれただろうか。ジャッジへのイライラを突いたのは１点を追う五回である。Ｎ・ネルソンへの四球、そのボール判定が相当気に入らなかったのだろう。マウンドの土を掴んで投げつけた。ここで近本光司である。

　初回と三回は２打席とも内寄りのツーシームに詰まらされていた。スタンスをいつも以上にオープンにして挑んだ（ように見えた）第３打席。最後まで右肩の壁を崩さない。詰まった残像を消してスライダーを右へ運び、好機を広げたのはさすがというしかない。

　弱点を狙え。それだけなら誰でも言える。弱みを突いてどう攻めるか。近本がお手本を示したこの回に同点打を放った前川右京は「さされた」と語ったそうだが、反応でレフトへ飛ばすのもケイ対策の実りに感じる。

　六回の大山悠輔の本塁打だってそうだ。こちらから見る限り、打席での立ち位置をわずかに引いたことによって懐への変化球をレフトスタンドへ運べたように思う。難敵のウイークを知りトライアンドエラーでやっつける。ＣＳもどうぞいらっしゃい。勝手ながら自信が湧いてきた。＝敬称略＝