10年前の秋を思えば
【9月22日】
須磨翔風のエース花畑力久の力投を見させてもらった。強打の彩星工科打線を1点に封じ込んだ九回、スタンドから喝采を浴びた。来春のセンバツに繋がる秋季高校野球である。
日曜日に明石トーカロ球場で行われた兵庫県大会の3回戦、屈指の好カードを観戦した。九回を終えて1-1。タイブレークの延長十一回で左腕の花畑が力尽き、須磨翔風はベスト8ならず…センバツは絶望的になった。
直球も変化球もテンポも素晴らしかった。味方にミスがあっても表情を変えない姿は、日本を代表する先輩を彷彿とさせる。九回まで最少失点で腕を振った背番号1を眺めながら思った。いま無名でもいつか檜舞台で輝け。
才木浩人のように…。
さて、こちら神宮はタイトルを争う阪神のエースがマウンドへ上がった。打ち下ろしのフィールドはその佳境で最も投げたくない球場かもしれない。しかも相手は青柳晃洋。あえて言わないだろうけど、まったく意識しないといえば噓になるだろう。というか、見ているこっちが力んでしまった。
直球も変化球もテンポも素晴らしかった…いや、本人にとっては自己採点の低い変化球もあったかもしれない。それでも、佐藤輝明と前川右京が青柳を捉えて援護してくれただけに期待感をもって見守ったが、野球の神様から試練をもらったかっこうだ。
実はシーズン前に朝日放送のラジオスタジオで才木と対談させてもらった日がある。サシは初めてだから年甲斐もなく構えてしまったけれど、時間の経過とともに、まっすぐな人柄に引き込まれた。トミー・ジョン手術を経てタイトルを争うまでになったそのプロセスを聞けば、なるほどうなずける。ときにお立ち台でおちゃらける姿を見ると、普段からそんな感じ?と、ツッコみたくもなるけれど、中身は知的好奇心の塊。そんな印象をもったし、治癒への研究心、そのひた向きさにも敬服した。一流の階段を上るはずだ。
「体の構造とか、筋肉とか、投げる動きとか、そういうものは自分で勉強して調べて、どうやったら良くなるのかな…っていうのは結構やりました。トレーニングもそうですけど、コンディションに関しては、肩回り、肘回りで手術した後のリハビリ過程で必要な筋肉とか自分で調べて、自分でやれる範囲はなんとか。昼間練習して、トレーナーさんに色々見てもらって、それが終わって、晩ご飯食べて、寝る前にまだ自分でできることはあるので…」
術後、カムバックまでのプロセスはどんなふうだったのか。そう聞けば、分かりやすく教えてくれた。
それにしてもこれだけの素材がなぜ神戸の公立高へ?単純にそんなギモンを抱くファンも多いと思う。「才木の母校」として名を馳せ、今は強豪といわれる須磨翔風だけど、高2の才木がアキタイを戦った10年前はまだ…。
秋風が染みいる神宮で六回途中に無念の降板…。スタンドの歓声に手をあげるプロ9年目。足をひきずりながら次へ向かう才木の胸中やいかに。 =敬称略=
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