日経の虎特集を読んで
【9月13日】
試合後、阿部慎之助は報道陣にこう言ったそうだ。「ハラワタが出てきそうだったよ」。K・ケラーの4与四球を思い起こしホンネを吐き出したようだけど、分からないではない。
荒れてストライクが入らない投手が自滅するシーンは年に何度か見る。巨人目線でいえば、中盤に一挙7点を奪われてもサヨナラ勝ち。一番ホッとしているのはケラーだろうか。
それにしても最後は千両役者ぶりを見せつけられてしまった。九回のサヨナラ打を「さすが」と書けるのも優勝が決まったあとだから。カード最終戦は坂本勇人に主役をもっていかれたかっこうだけど、こういう試合は何に触れようか迷いながら、我らが坂本誠志郎の「さすが」について書きたい。
ケラーを攻めたビッグイニングの起点は坂本の「悪球撃ち」だった。3点を追う五回である。あのタイムリーは見送ればボール球のまっすぐ。これを皮切りに一気に7点を奪ったわけだ。
3番の森下翔太から始まったこのイニング、巨人は先発の横川凱から2人目のケラーにスイッチしていた。ご存じ、元阪神の助っ人右腕だけど、終始ボールが暴れていた。まっすぐもカーブもスプリットも…。坂本までの打者4人に対し、変化球はカウント球を含め6球すべてボール。これだけ抜けてゾーンを逸すれば、受ける岸田行倫も気の毒だ。坂本は目の前で代打・高寺望夢の四球を見て打席へ入ったわけだが、きっちりと心理戦をモノにした気がする。高寺へは全6球まっすぐだった。戦況は1死満塁。制球のきかない変化球でカウントを悪くしたくない女房役の選択はもう…。
初球のまっすぐが浮きあがり、2球目は構えた岸田のおでこより上ずったまっすぐ。「悪球」は言い過ぎかもしれないが、これをレフト前へ運んだ坂本にとってこのゾーンは想定内だったはず。しかも、球審のジャッジがことごとく低めに辛い。いわばこの日の対ケラーのストライクゾーンだった…ともいえなくはない。
セーフティーリードがないに等しい東京ドームで岩崎優と石井大智が不在のゲームである。10-11の乱打戦も冷静に、顔色ひとつ変えなかった坂本は「反省して次に生かしたい」とCSをにらんでいたが、負け試合ながら僕の目には頼もしく映った。
この日は日本経済新聞をPCの横に置いて巨人戦を見た。なんと!日経がカラー2面を割いて派手に阪神特集を組んでいたのだ。読めば、藤川阪神Vの経済効果は976億円だそうで、23年の経済効果を上回るという。「データで見る優勝の軌跡」では盤石のリリーフ陣を05年のそれと比較してある。05年は先発の平均投球回数は5・88回で、今季のそれは5・99回。80試合登板の藤川球児が君臨した05年は25年よりも「リリーフ投手の登場がやや早かった」とある。石井大智、佐藤輝明、中野拓夢らを称える紙面。デイリーか!とツッコミながらにんまりする。できれば坂本特集も見たかったけれど。
さて、MVP投票をどうするか。僕の腹はもう決まっている。=敬称略=
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