甲子園と仲良くなりたい

 【9月5日】

 阪神園芸の腕の見せどころ。そんな雨空が広がっていた。グラウンド状態が気になって朝9時過ぎに甲子園に来てみると、グレーの小さなシートがマウンドと打席にのみ敷いてあった。

 内野には大きな水たまりが2つ。台風一過。雨は上がっていたのでどうにかなる。確信をもって練習開始を待っていると、ザァ~っと、もう一降り。それでも…神整備、ありがとう。

 諸々の感謝を乗せたレインボーをレフトスタンドへ架けたのは大山悠輔だった。背番号3のグランドスラムでマジックはついに3。喝采が溢れる中で大山へのそれと同様、いや、それ以上の声援を浴びたのは、6月以来となるショートでのスタメンに名を連ね、二塁打を打った木浪聖也かもしれない。

 ここにきてショート木浪。もちろん気になったので藤川球児の言葉を聞きたくなった。どういう気持ちで木浪を送り出したのか。インタビュアーから問われた指揮官のアンサーはこうだ。

 「もちろん対戦投手に合うんじゃないかというところで起用したんですけど、しっかり答えを出してくれて。また今後も楽しみになりますし…」

 相性か。いや、猜疑心の強い僕を納得させてくれたのは「大山への期待」を問われたときの球児の答えだった。

 「普段から練習を見てますけれど、ヒットになるかならないかではなくですね…。内容を十分、木浪もそうなんですけど、内容を見ていますから」

 数字だけ見ればここのところ大山も順風ではなかったし、木浪だって、書くまでもない。だが、球児は選手の本質をずっと見ている。偉そうに書かせてもらえば、そんな見識のリーダーだからこのチームは結果に恵まれる。

 今シーズンを振り返れば、藤川新政権の開幕ショートは木浪だった。レギュラーだった彼がポジションを逸したのは拙守から。こちらはそういう認識だけど、球児の見解は別の所にあるのかもしれない。今後木浪の「内容」がいいものになれば、どうなるのか。

 木浪、小幡竜平、熊谷敬宥、高寺望夢。今シーズン4人が就く阪神のショートだけど、まず求められるのは「守り」であることは間違いない。

 台風が去った夜。阪神園芸施設部長の金澤健児に聞いてみた。先日、球団顧問の岡田彰布が「広島の菊池は『きょうのグラウンドはどんな感じですか?』とか聞きにくるって金澤が言うてたもん」と、堅守の源になる準備を称えていたけれど、他の内野手は?

 金澤曰く、他球団の選手で一番グラウンド状態を聞きに来るのは「坂本勇人」だという。必ずカード初戦の折に「(甲子園の)最近の天候はどんな感じですか?」など、「取材」を欠かさないという。一流になるはずだ。

 では、阪神の選手は?

 「みんな色々と(グラウンドコンディションの)話をするよ。木浪も小幡も熊谷も…」。佐藤輝明は球宴明けのタイミングで「ちょっと柔らかくなってますか?」と、金澤に聞いてきたそうだ。虎戦士はみんな甲子園と仲良しになりたい。準備と内容。球児は最後まで見ている。=敬称略=

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