別に何とも思っていない

 【7月25日】

 前半20分を過ぎたところでバチッと目が冴えた。おとといサッカー東アジアE-1選手権の日本対中国をテレビ観戦していると、ゲスト解説の槙野智章がもうひとりの解説者岡田武史に問い掛けた。

 「岡田さん、枠が3人増えたら98年のフランスW杯のメンバー選考は大きく変わりますか?」

 今秋カタールで開催されるW杯は、登録メンバーが増枠される。その変更を知る槙野は「歴史的決断」に直球で踏み込んだのだ。

 「外れるのはカズ…三浦カズ」 皆さんご存じのあれである。日本が初出場したフランスW杯は、当時代表を率いた岡田が、それまで日本サッカーを背負ってきた三浦知良を土壇場でメンバーから外し、物議を醸した。あのときを回想しながら岡田は槙野に言った。

 「カズのことを言っているのだろうけど、全然後悔はない」-。

 借金を完済した阪神戦の余韻に浸った後、録画していたE-1選手権を夜中に観戦した。唯一、個人的に取材したことがある宮市亮(横浜F・マリノス)見たさに眠い目をこすったのだけど、若い森保ジャパンが格下相手に手こずり…退屈していると、よもやのインタビュアー槙野が岡田を直撃。こっちも仕事モードになった。

 「自分が有名になりたいとか、成功したいというのではなく、チームが勝つ為を考えた自信があった。だから別に僕は何とも思っていないし、それをカズも分かってくれていると思う。監督の仕事というのはそういうこと。私心なくやれば逃げ隠れすることは何もない。チームが勝つ為に自分がベストだと思ってやったことだから」

 岡田はそう言っていた。三浦知良を尊敬している僕はいまだにあの選択をよく思っていない。が、24年たった今、岡田からその言葉を聞いてあらためて思う。監督とはそういうものなのだ、と。

 日本サッカー協会が岡田に任せた以上、サッカーファンは「岡田の考え」についていくしかなかった。(当時大学生の僕はついていけず、ヤケ酒をくらったけど)

 リーダーが決断すれば、それに反する声は出る。選択が大きなものであるほどハレーションも膨れかねない。矢野燿大を思うとき、読者も思い当たるふしが様々あると思う。しかし、いったん阪神の本丸が監督を決めれば、虎党はその監督の選択についていくしかない。(阪神に限らず、ついていけずヤケ酒をくらうファンはいる)

 前半戦を終えるタイミングで、阪神オーナー藤原崇起が次期監督像について初めて言及した。次に誰がその座に就いても低迷すれば途端に異論者は出るだろう。矢野のことをボロカス言っていた人だってこの先「奇跡」が起これば何と言うのか?いや、その人たちを責めているわけではなく、つまり監督ってそういうものなのだ。

 だから、岡田武史のように、阪神ならかつての星野仙一や岡田彰布のように、なんか文句あるか?俺がこうやと決めたらこうなんや-そんな腹のくくり方でいい。僕の目には、ときに矢野もそんなふうに映るけれど。=敬称略=

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