代わりはナンボでも…

 【10月19日】

 北條史也が宮崎空港から伊丹行きの航空機に乗ったのはこの日朝のことだ。特にトレーナーの付き添いもなく、ひとり帰阪した彼は再検査を受け、きっと近いうちにその結果が公表されるのだろう。

 北條とは特にプライベートでの付き合いがない。けれど、周辺から耳にする彼の練習に取り組む姿勢を何度も聞いて応援…いや、肩入れするようになって久しい。北條、藤浪晋太郎らの世代が中心になって黄金時代を築くのが理想。当欄で何度かそう書いてきたし、今だってそう思っている。だからこそ、今春の宜野座キャンプ中、一塁でノックを受ける北條のひたむきな姿を見てもどかしくなったことに触れた。

 まだ、27歳。もう一度、ショートで勝負してほしい。また、勝負させてあげてほしい。そんな趣旨のハナシも書かせてもらった。

 チーム事情は分かる。複数ポジションをこなせなければチャンスが得られないことももちろん分かる。それでも、彼にはもう一度、ショートでガチンコ勝負に挑ませてあげたい。それだけの価値がある稀有な才能だと聞いてきたし、今もそう信じているので…これがオッサン記者の願いである。

 正遊撃手の中野拓夢が猛打賞を記録した夜だ。昨年までその座に就いていた木浪聖也も複数安打を放ち、ヤクルトに完勝。こんな日だからこそ、本来そこに就くべき職場を失った北條の心を思う。

 もしかしたら多くのファンは阪神のショートはしばらく中野で安泰だと思っているかもしれない。レジェンド鳥谷敬の後継者が割と早く定まったものだ、とも。

 もちろんそうなるかもしれないし、中野が向こう10年、鳥谷を凌ぐ有能なショートであり続ければ阪神にとって素晴らしいことだ。

 しかし、もしそれを望むとしても、北條の復活は欠かせないと僕は思っている。万全の彼がその座を脅かすことで内野戦争は白熱しそこに競争原理が生まれ…必ず、そうあるべきだと思う。

 北條は9月半ばに左肩を亜脱臼し、今月フェニックス・リーグで実戦復帰を果たしたばかり。そんな背番号26の気持ちをおもんばかれば、やるせなくなる。

 野球の神様…酷ですよ。

 プロ野球が甘っちょろい世界でないことはよく知るつもりだ。  「お前の代わりなんかナンボでもおるんじゃ」

 金本知憲はカープ時代、そんな叱咤…いや〈イジメ〉を当時の監督・三村敏之から幾度となく喰らった。だから、ケガをしてもトレーナー室へ駆け込むことはせず、ひたすら痛みを隠し通した。

 詳しいことは分からないけれど北條も無理をしたのではないか。もう空白をつくりたくない。そんな焦燥感がケガの再発を招いたとすれば、辛い。

 糸原健斗が5番で仕事を果たした夜だけど、テレビ大阪で解説した江夏豊は「彼の打順は本来そこじゃない」と語っていた。二遊間を守ってクリーンアップを打てる者…。北條よ、必ず競争に戻ってきてくれ。=敬称略=

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